『ザ・トラベルナース』菜々緒、医師役で切り開いた新境地 静の鋭い目が意味するものは?

菜々緒が初の医師役でみせた新境地

 菜々緒といえば、数々の作品で演じてきた悪役から“悪女”としてのパブリックイメージが定着している。もちろん、そればかりではなくギャップのあるキャラクターを演じることもしばしばで、「初の母親役」「初のホラー作品」など、見出しに“初の”が付きやすい印象の俳優でもある。

 現在出演中のドラマ『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)もまた、菜々緒にとっては初の医師役だ。『まっしろ』(TBS系)や『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系)といった医療ドラマへの出演も多くあるが、それらは看護師役だった。そういったこれまでの医療ドラマとは男女の立場が逆転していることも、ある種『ザ・トラベルナース』が常識を覆しているドラマと言えるだろう。

 そして、先述したような強い女性の役柄が多い菜々緒がこの『ザ・トラベルナース』で演じる郡司は、男性社会が色濃く残る天乃総合メディカルセンターで「女だから」と見下される役。菜々緒にとってはあらゆる面で新鮮な役柄になったはずだ。

 自分では何も決断できない、決定権すらない郡司は、ナースの歩(岡田将生)からも指示の遅さを指摘されてしまう始末。そんな板挟みに遭う郡司の不満がついに「ナースのくせに外科医に意見しないで!」という憤りとなって歩に向けられる。

 自分自身に迷う郡司に優しく寄り添うのは静(中井貴一)。郡司の好物である紅生姜(牛丼のテイクアウト用)と一緒に、静は「自分の考えを貫かず、患者さんから逃げようとするドクターは無責任なただの馬鹿ドクターです」というアドバイスを送る。郡司が屋上で一人紅生姜の大量に乗った焼きそばパンにガブリと噛み付く姿は、外科医としてのプライドを取り戻そうとするサインだ。

 郡司が担当する四方田(岸本加世子)は末期の大腸がん患者。仮に手術をしても完全に治るのは難しい状態にあるが、それでも治療を懇願する四方田には喧嘩別れしてしまった息子ともう一度会いたいという本当の理由があった。四方田の思いを知り、歩は息子の啓介(元之介)に説得を試みるが、手術までには間に合わず。術後の朦朧とした意識の中、歩が啓介となって四方田の手を握るといった“優しい嘘”をつくのだった。一部始終を目撃していた静には“偽啓介”とイジられることに。ただ、静のお得意だった患者への嘘を歩がマネるというのはナースとして少なからず認めている部分があるということだろうか。

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