『スクール・フォー・グッド・アンド・イービル』のファンタジー世界が映す、現代の思考

Netflixファンタジー作品共通のテーマ

おとぎ話の善悪のバランスを保つ学校が舞台

 もう一つ、最新作『スクール・フォー・グッド・アンド・イービル』は、おとぎ話の善悪を保つために作られた学校が舞台という少し変わった設定の物語。

 自分の住む村にうんざりしたソフィー(ソフィア・カルーソ)は、村を出ようと試みていた。善と悪の学院があると知った彼女は手紙を送り望み通り、学校に通うことになる。そこには、一生友達と誓ったアガサ(ソフィア・ワイリー)も一緒に着いていくことに。学院は、全ての物語の始まりの地であり、おとぎ話の善悪のバランスを保っている場所。しかしソフィーは善の学院に入りたかったのだが悪の学院に、村に帰りたいアガサは善の学院に入ることになる。

 おとぎ話ではなく、その設定のバランスを保つ世界という、一歩引いた話の作り方で真新しい不思議な感覚の作品。『アーサー王伝説』のアーサー王の息子が学校で大人気だったり、『ジャックと豆の木』『白雪姫』などの登場人物も全てこの学校出身。落第するとしゃべるポットやネズミなどの脇役に変えられてしまうという。

 まるでシンデレラのように、動物や自然を大切にしていたソフィーだったが、学院の存在を脅かす真の悪ラフェル(キット・ヤング)によって、本物の悪役になってしまう。一方で、学院から出たいと思っていたアガサは、皮肉にも善の学院で真の正義を確立し、愛の力でソフィーを守ろうとする。人間には善も悪もなく、両方が備わっているからこそ世界は成り立っている。どちらかに分けることはできないのだ。

 どちらのストーリーも、完全なる魔法のおとぎ話にフォーカスしている訳ではない。『ウィンクス・サーガ:宿命』は、現代の女子高生が妖精になったら、という世界観で作り上げている。『ハリー・ポッター』も2000年代のロンドンが舞台であるが、人間たちの道具の知識はなく魔法族たちは自分達の世界で生きていた。しかし本作は、より高校生らしいストーリー展開で視聴者を魅了し、現にシーズン2まで打ち切りになることなく完成させた。

 『スクール・フォー・グッド・アンド・イービル』は、舞台は現代ではなく少し昔に設定されているものの、アガサが現代を生きる視聴者の意見を代弁してくれているような気持ちになる。無意味な「ビューティー学」や動きづらいドレス、善と悪の二つに分けてその方針に従わなければならない運命にも異議を唱えた。おとぎ話に対する視聴者の疑問を代弁してくれた。そして今の時代、自分を何かに当てはめなくてもいい、自分は自分の感情に従って生きていけば良いというメッセージを残してくれた。

 現実離れした世界観で我々を魅了した作品から一変、現実世界にもあり得るようなストーリー設定を試みているファンタジーの世界。今度はどんなオリジナル作品が出てくるか、期待したい。

■配信情報
『ウィンクス・サーガ:宿命』
『スクール・フォー・グッド・アンド・イービル』
Netflixにて配信中

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