『ポプテピピック』は制作サイドにとっても“声優ガチャ”!? 進化した第2期の裏側に迫る

『ポプテピピック』第2期の裏側に迫る

 2022年10月シーズンのテレビアニメは、注目シリーズの続編や人気マンガ原作の作品がひしめき合う、豊作シーズンと言われる。

 そんな中でも特別な異彩を放つのが、『ポプテピピック TVアニメ―ション作品第二シリーズ』だろう。2018年に放送された第1期は、前後半で声優を入れ替えたり、数多くの個人アニメーション作家が多彩な作風を披露したり、ブラックジョークも辞さない姿勢で大きな話題となった。

 第2期について制作者たちはどんな気持ちで臨んでいるのか、シリーズ構成・シリーズディレクターを務める青木純氏(スペースネコカンパニー)と神風動画パートの制作進行を務める柴崎大輔氏に話を聞いた。

「第1期でやり切ったつもりでいた」

――本作の第2期製作が決まった時、青木さんはどうお感じになりましたか?

青木純(以下、青木):第1期の後にテレビスペシャルがあった時「ああ、まだ終わらせるつもりはないんだ」とすでに思っていましたから、第2期の話が来た時は「やっぱり、やるんですね……」みたいな気分でした(笑)。

――青木さんは第1期の頃、雑誌のインタビューで「たとえ2期があったとしても、担当する人が困り果ててしまうくらいやり抜いた」とおっしゃっていました。その担当する人がご自身だったわけですが。

青木:結局、自分で被ることになってしまいました(笑)。1期でまさにやり切ったつもりでいましたから、「第2期は何をやればいいのか」とチーム一同明らかに苦しいところからのスタートでした。そんな中で救いだったのが、原作の大川ぶくぶ先生のやりたいことが全く枯れていなかったことで、第1期同様、どんどんアイデアを出して下さったのが心強かったですね。

柴崎大輔

――柴崎さんは、神風動画に入社されて3年目とのことですが、第1期の頃はまだ入社前だったのですね。

柴崎大輔(以下、柴崎):そうですね。第1期の頃はいち視聴者として観ていました。すごいことをやっているアニメだなと思っていたので、まさか自分が参加することになるとは思っていませんでした。

青木:入社したときは、神風動画でカッコいい作品をやりたかったんじゃないんですか。まさか『ポプテピピック』をやることになるとは思っていなかったのでは?

柴崎:そうですね(笑)。でも、神風動画は新しいことに挑戦する姿勢があるので、制作進行としても楽しく取り組めました。自分もちょっと変わった仕事をしたいなと思っていたこともあり、プロデューサーもそういう気持ちを察して、声をかけてくれたのだと思います。

――ところで大川先生とは第2期の内容について、どんなお話をしましたか?

青木:まず第2期をどういう形式でやるのか、どの程度第1期を踏襲するのかなどの枠組みから話し合いました。声優を前後半で入れ替えるスタイルをぶくぶ先生は気に入ってくださっていて、そこは踏襲したいと最初におっしゃっていました。それから他のギミックの話を詰めていきました。

――大川先生は、第1期を踏襲しつつ、新しいこともやっていこうという感じだったんでしょうか?

青木:新しいかどうかよりも、視聴者の方が楽しんでくれることをやろうというスタンスでしたね。自分としても、新しいことをやるというのは優先順位としては高くなかったです。その中で、神風動画さんは第1期でやっていなかった新しいことに挑んでいて、最後のPOP Tuberパートや企業コラボなど、新規要素の多くは神風動画さんの発案です。

――その企業コラボのパートですが、これは毎週あるのでしょうか?

柴崎:いくつかコラボのない週もありますが、今後の展開もお楽しみにしていただければと思います。

――第1期ではプロデューサーの方は色々な企業に怒られるのではと怯えていたと思うんですが、公式にコラボができるようになったんですね。どういった経緯でコラボが実現したのでしょうか?

柴崎:ぶくぶ先生もゲーム好きですし、第1期にドット絵のゲームパートもあったことから、ゲーム関連で面白いことができないかと社内で話し合っていく中で「公式にコラボするのもありなのでは?」という案が浮上しました。ぶくぶ先生もそのアイデアを気に入ってコラボ内容を考えて下さり、それを直接スクウェアエニックスさんに提案させていただきました。他の企業さんもありがたいことに『ポプテピピック』に対する理解が深くて、こちらの提案をすんなり受け入れてくださいました。

――意外にも『ポプテピピック』に寛容な企業が多かったのですね。

青木:OKしてくださった企業さんとは企画が進められたという話ですね……(笑)。実は、第2期製作の発表前から一緒に何かしたいですねと言ってくださっていた企業さんもあったんですよ。

青木純

――あれは、いわゆるCM的な意味でお金のやり取りは発生しているんでしょうか?

青木:いえ。コラボ先の企業さんからお金はいただいていません。「じゃあ、なんでコラボしてるの?」って感じですけど(笑)、それは単純に視聴者の方が楽しんでくれるからってことで。普通はこういうのはそれなりの予算をもらって、ビジネスとしてやるものなんですけど、特にそういうこともなく(笑)。手間だけはCM並みにかかるんですけど。

――先方のチェックの工程が必要になりますもんね。

柴崎:そうですね。確認事項は多いので、楽しんでもらうためだと唱えながらすすめてました。

――その他、柴崎さんは制作進行として大変だったことはありますか?

柴崎:新規のPOP Tuberのパートですね。このパートはオンエア版と配信版で内容を変化させているんです。VTuberの仕組みなら映像と音声を一緒に収録できて制作時間を短縮させられるので、ギリギリまで待って時事ネタや新鮮なネタをできるだけ取り入れたものにしようという狙いがあって、あえて放送日直前に収録をしているんです。しかも、実際声優さんたちご本人にVTuberのシステムでキャラクターを動かしていただいています。配信版については声優さんの音声に合わせて神風動画の方で映像を作っていることもあり、多方面にいろいろ調整させていただきながら取り組んでいます。

――第2話ではサンライズさんが参加していましたが、これはどういった経緯だったのでしょうか?

柴崎:テレビスペシャルのOPで大張さんとサンライズさんにご協力いただいたご縁で、今回はもう少し長めのパートをお願いできないかとご相談したところ、大張さんも乗ってきてくださったんです。

青木:原作でも大張さんネタがあったので、せっかくならご本人にやっていただこうとなったのが発端だった気がします。

――第2期には、サンライズさん以外のプロダクションも参加しているのでしょうか?

青木:はい、さらにいくつかのプロダクションが参加しています。第1期は“声優ガチャ”なんて言われましたが、第2期はそれに加えて“プロダクションガチャ”って言われるんじゃないかと思います。

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