宮﨑あおいの出演作にみるチャレンジングな姿勢 『らんまん』“語り”は俯瞰的視点に期待?

『らんまん』宮﨑あおいの存在感は語りでも

 少女のようにあどけない雰囲気を持つ宮﨑だが、侮るなかれ。軽い気持ちで彼女の出演作を観ると、暴力的なまでに迫ってくる感情に不意打ちを食らうことがある。特に心を揺さぶられるのは、宮﨑が体現する愛だ。『ソラニン』(2010年)、『ツレがうつになりまして。』(2011年)、『きいろいゾウ』(2013年)でも、そこには強い意志で他者を愛する姿がある。中でも『怒り』(2016年)で宮﨑が演じた愛子は忘れられない。純粋さと危うさを秘めた愛子が愛したのは、田代(松山ケンイチ)という正体不明の男。未解決殺人事件の容疑者と共通点がある彼の印象は、不安定な愛子の言動ひとつでがらりと変わっていく。助演として一歩後ろに下がりつつ、その眼差しを通して相手の役柄を形取っていく演技が印象的だ。

 その力はナレーションの仕事にも生かされている。1995年から続く人気ドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)で、定期的にナレーターを務めている宮﨑。その起用回数は番組最多記録を誇り、10月23日・30日に2週に渡って放送される『あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~』のナレーションも担当している。宮﨑の語りは番組で映し出される数々の波乱万丈な人生に寄り添いながらも、価値観を定義することはない。何を感じるか、そこから何を得るかは観る人に委ねるバランスに優れたストーリーテラーだ。

 そんな彼女が語りを務める『らんまん』は植物学者の牧野富太郎を主人公のモデルとした物語。忠実を織り交ぜながら描くフィクションには、あたたかくも俯瞰的視点のある宮﨑の語りが非常にマッチするのではないだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』
NHK総合にて、2023年春放送
出演:神木隆之介、浜辺美波
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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