『チェンソーマン』パワーに裏切られたデンジに見える素直さ 垣間見えるマキマの威圧感
そんなパワーとデンジのやりとりが第3話の中で印象的である。ニャーコの事情を聞いたデンジは、下心満々で彼女を助けることにする。コウモリの悪魔の住処に行く途中、路面電車の中でポチタのことを話すデンジ。「もう撫でることはできないけど、俺のココで生きている」と胸に手を当てて話す彼を、パワーは“心の中で生き続けている”と浪漫的な意味にとらえて嘲笑した。本当は文字通り、デンジの中で生きているのだけど。
そういった様子から、魔人のパワーには人の気持ちに寄り添う優しさが欠如していることがわかる。そしていとも簡単に嘘を吐きながら、裏切る。裏切られた時、デンジの脳裏にはアキの悪魔に対する忠告の言葉がよぎるが、その後パワーがデンジの気持ちがようやくわかったと言って食われた後、それでもやはり気を悪くし同情する瞬間があった。ポチタがいなくなった時という自己の経験を元に他者の気持ちを想像する。アキがデンジを「ガキ」と称していた。その言葉はモラルを教えてくれる大人がいない環境で育ったことを指していると同時に、彼の素直さも意味しているように思える。第2話でも魔人に対して「自分がそうなりえたから」と慈愛の気持ちを見せるなど、デンジはそういった想像力があるのが印象的だった。
コウモリの魔人との闘いは凄まじい作画で展開され、無事に退治することができたデンジ。彼が「まだ一揉みもしてねえ!」と叫ぶシーンは引きで映されてしまったことで迫力がやや欠け、原作にもあった彼の勢いを削いでしまったように思える。第3話では実写映画的な「間」の使い方が印象的にされていたこともあり、本作に何を求めるかによって評価が割れそうではある。ただ、破れたシャツを風になびかせ、まるでスーパーヒーローのマントのような姿にみせる演出はクールで、アニメだからこそ効果的だったように思えた。マキシマム ザ ホルモンによるエンディング「刃渡り2億センチ」のアニメーションのカオスっぷりは、まさに『チェンソーマン』の精神そのものを体現した素晴らしいもので、次回以降のエンディングにも期待が高まる。
■放送・配信情報
『チェンソーマン』
テレビ東京ほかにて、毎週火曜24:00〜放送
Amazon Prime Videoにて、毎週火曜25:00〜最速配信
各プラットフォームにて、毎週水曜25:00〜見逃し配信
キャスト:戸谷菊之介(デンジ)、井澤詩織(ポチタ)、楠木ともり(マキマ)、坂田将吾(早川アキ)、伊瀬茉莉也(姫野)、高橋花林(東山コベニ)、八代拓(荒井ヒロカズ)、津田健次郎(岸辺)、内田真礼(天使の悪魔)、花江夏樹(サメの魔人)、内田夕夜(暴力の魔人)、後藤沙緒里(蜘蛛の悪魔)、大地葉(沢渡アカネ)、濱野大輝(サムライソード)
原作:藤本タツキ(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:中山竜
脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:杉山和隆
アクションディレクター:吉原達矢
チーフ演出:中園真登
悪魔デザイン:押山清高
美術監督:竹田悠介
色彩設計:中野尚美
画面設計:宮原洋平
音楽:牛尾憲輔
オープニング・テーマ:米津玄師「KICK BACK」
挿入歌:マキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」
エンディング・テーマ:
ano「ちゅ、多様性。」
Eve「ファイトソング」
Aimer「Deep down」
Kanaria「大脳的なランデブー」
syudou「インザバックルーム」
女王蜂「バイオレンス」
ずっと真夜中でいいのに。「残機」
TK from 凛として時雨「first death」
TOOBOE「錠剤」
Vaundy「CHAINSAW BLOOD」
PEOPLE 1「DOGLAND」
マキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」
アニメーションプロデューサー:瀬下恵介
制作:MAPPA
©藤本タツキ/集英社・MAPPA
公式サイト:https://chainsawman.dog/
公式Twitter:@CHAINSAWMAN_PR