『チェンソーマン』第1話から神作画炸裂 藤本タツキが好きな映画オマージュに溢れるOPも

 アニメ『チェンソーマン』がテレビ東京系で放送開始された。10月11日放送の第1話「犬とチェンソー」は、初回にして早くも制作スタジオのMAPPAが威厳と愛と、全てをかけて本作を作り込んだことが窺える素晴らしい出来栄えだった。

アニメ『チェンソーマン』公式サイトより

 予告編の時点で作画の高さはかなり評価されていたが、想像以上に全シーンにわたってそのクオリティが保ち続けられている。加えて、3Dアニメーションと2Dのスムースな組み合わせが見やすく、車内で帽子を深く被っていたヤクザのおじさんが話しながら顔を上げる瞬間など、細かいが非常に実写的な動きを可能にしているシーンがいくつもあった。

 一方で、同じ表情のコマが続くことで見せられる間や、ゾンビに襲われて細切れにされたデンジとポチタなど、やはり漫画だから表現できたものは代わりに失われている。アニメとしての素晴らしさもありつつ、映像的な視点や動きを意識している漫画原作が、映像に劣らずその威厳を保ち続ける結果にもなったことは、改めて漫画というフォーマット独自の強さ(そして原作漫画の凄さ)を実感させた。

TVアニメ『呪術廻戦』ノンクレジットOPムービー/第2クールOPテーマ:Who-ya Extended「VIVID VICE」

 全体的に青みがかかっている映像や街の色味は、同じMAPPAが手がけたアニメ『呪術廻戦』第2クールのオープニング映像と似た雰囲気を感じる。何を隠そう、本作の監督を務める中山竜は「もはや映画」とファンに言わしめた『呪術廻戦』第19話「黒閃」の演出・絵コンテらを担当した人物。虎杖悠仁と東堂葵が特級呪霊・花御の繰り出す巨大な樹木をターザンの如くかけめぐる動きのスピードには驚愕したが、今回『チェンソーマン』第1話のゾンビの悪魔とのバトルシーン、およびオープニング映像にもそれと同じスピードと爽快感を感じさせるものがあった。

映画オマージュと示唆で溢れたOP映像にも注目

 オープニング映像といえば、とにかく速いスピードで多くの情報量が詰め込まれていた。そこには数多くの映画オマージュ的カット以外に、本編の内容やキャラクターの関係性を示唆する印象的なシーンもいくつか登場したので、少し振り返っておきたい。

『チェンソーマン』ノンクレジットオープニング / CHAINSAW MAN Opening│米津玄師 「KICK BACK」

 まず冒頭、デンジとアキ、マキマ、パワーがスーツで歩くシーンは恐らく『レザボア・ドッグス』、墓場で少年デンジがポチタを抱えているシーンは『悪魔のいけにえ』、岸辺が銃を構えるシーンは『パルプ・フィクション』、井戸の真上でチェンソーマンとソードマンが激突するシーンは『貞子vs伽椰子』、暴力の魔人がベッドに座るシーンは『ノーカントリー』、デンジとアキが車を出すシーンは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、会議室でコベニが机に座るシーンは『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』、和室でデンジとパワーが恐怖に慄くシーンは『女優霊』、階段の下で天使の悪魔が座るシーンは『ジェイコブス・ラダー』、屋上でアキと姫野が向き合うシーンは『コンスタンティン』のパロディだ。

 その後、映画館で公安対魔特異4課メンバーが映画を観るシーンに続き、ボーリングをするシーンでは『ビッグ・リボウスキ』、水着姿のパワー登場シーンのロゴはおそらく『ソー:ラブ&サンダー』から、デンジ(チェンソーマン)が球体の悪魔らしき物体から血まみれで出てくるシーンは『新世紀エヴァンゲリオン』、金色の巨大な球が転がってくるシーンは『ファイト・クラブ』、パワーが爆発の中立ち去るシーンは藤本作品のセルフオマージュとなっている。もともと映画好きと知られる原作者の藤本タツキは、コミック単行本に「〇〇好き!」とお気に入りの映画を紹介したり、作品内でも存分にパロディを描いたりしていた。また、原作漫画に見受けられる“視点”が完全に映画などの映像として映しているかのようなショットを意識している部分もあって、彼の作品はそれがどんなフォーマットであっても“映画的”なのである。そのショットはアニメでも健在で、物語を進める上で映しておかなければいけない説明的なものだけでなく、主人公デンジの心情描写として成り立つ意味のあるものが数多く登場しているのが印象的だった。

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