『チェンソーマン』原作カットの英断でアキとパワーが初登場 デンジに生まれる新たな信念

 ついに、デビルハンターとしてのデンジの生活が始まった。『チェンソーマン』第2話「東京到着」は、いわゆる新キャラ登場回となった。

『チェンソーマン』公式サイトより

 原作漫画にしては第2話から第5話の途中までと、前回が第1話をまるまるアニメ1話分にさいたのに比べてテンポはかなりアップ。加えて、原作第2話で遭遇するはずだった「筋肉の悪魔」のシーンが丸々カットされた。アニメが早朝だったのに対し、漫画はデンジとマキマがパーキングエリアを訪れた時間帯は昼で、一般客もいた。そんな中で「娘を森に連れていかれた」という男性の叫びを聞き、せっかくうどんを注文したのにマキマに悪魔退治を命じられるはずだったのだ。

 本来この一連のシーンは、「マキマが実はひどい女なのではないか」という疑問と、少女を連れ去った悪魔との戦いによって「悪魔は信用できない存在」という事実をデンジが感じるためにある。しかし、アニメ版はマキマへの疑念は車内での会話で収まり、悪魔に対する不信感は今後十分生まれていくので、本シーンのカットは物語の進行を妨げないどころか、車内の中から東京到着にかけてマキマへの想いが地続きになって積み重なるようになっていて、キャラクターの心情描写を逆に円滑にしたような印象があった(もちろん、アニメ化された筋肉の悪魔も観たかったけど)。その高まりに高まったマキマへの(そして胸への)想いが、その後に出会うアキや警察官らとデンジの、“ゴール”という名の動機の違いを、効果的に際立たせる。

 アニメでも結局、伸びに伸びきったうどんを食べる運命から逃れられなかったデンジ。「食べれ……食べれません」の、一瞬とぼけてバカになったような言い方もキャラに合っていて、声優・戸谷菊之介の演技が光る瞬間だった。「あーん」の一コマは原作者・藤本タツキのセンス溢れるものであると同時に、動作を静止画で捉える漫画だからこそできた表現。しかし、絶対的にうどんを食べるには不自然な動きであることをさておいても、あのカットをあえて登場させたところに、絶対アニメでも描きたいコマがあるという製作陣の強い意志を感じた。早朝のパーキングエリアの何とも言えないあの感じの青っぽさ、マキマが「デンジくんがタイプ」と言ったときに背景に朝日が差し込んで光が入り込むなど、その後の東京の描写も含めて時間帯と人物の心情に伴って背景の配色が変わるのが印象的であり、これは逆に動画だからこそできたことだ。原作漫画が意識した映画的な映りを、このように随所に感じる。

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