『鎌倉殿の13人』横田栄司、“変わらない”和田義盛の圧倒的存在感 義時との対比が際立つ

『鎌倉殿』横田栄司の圧倒的な存在感

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第40回「罠と罠」。後鳥羽上皇(尾上松也)は火事で燃えた閑院内裏の修復を鎌倉に引き受けさせる。坂東の御家人に重い負担がかかることになり、御家人たちが反発。そんな御家人たちをなだめる和田義盛(横田栄司)が旗頭となるような状況を、義時(小栗旬)は苦々しく思っていた。そんな中、義時を暗殺しようとした「泉親衡の乱」が発覚する。義時暗殺の企てに関わった者の中には義盛の身内がいた。

 義時と大江広元(栗原英雄)は義盛について密談を交わす。広元の脳裏には、頼朝(大泉洋)が亡き者にした坂東屈指の豪族・上総広常(佐藤浩市)がよぎる。かつて頼朝は「最も頼りになる者が最も恐ろしい」と広常の存在を脅威とした。義時は和田を滅ぼす決断を下す。

 梶原景時(中村獅童)、比企能員(佐藤二朗)、畠山重忠(中川大志)など有力御家人たちが次々に滅んでいく中、義盛、そして三浦義村(山本耕史)は生き抜いてきた。物語の序盤から幼なじみのような存在でもあった義時、義村、重忠、義盛だが、重忠が討たれ、義盛も矛先を向けられる。義盛も義村も、度重なる権力争いを前にしても自らの立場や姿勢を変えずにいる人物だ。変わってしまった義時と変わらない義盛、本心がどこにあるかわからない義村の対比が際立つ。

 義盛は無骨な坂東武者の中でも屈指の豪快さ、勇猛さを持つ。けれどその人となりは大らかで、とにかくまっすぐだ。そんな義盛は源実朝(柿澤勇人)や他の御家人たちからも愛されている。御家人たちの不満を聞く義盛は、不満を解消する手立てがなく困っている様子だったものの、彼らの不満を聞き入れる態度はとても真摯に映る。御家人たちが義盛の館に集うのも納得だ。義盛の息子たちが義時暗殺の企てに手を貸したことに頭を下げたときも、義盛は怒ったり困り果てたりするのではなく、まず話を聞く。そして「和田義盛が頭を下げりゃあ大抵のことはなんとかなる」と頼もしい言葉をかけた。裏切りが続く鎌倉では、登場人物たちの台詞に緊迫感が増しているが、義盛だけは、昔馴染みの義盛のままだ。義時に相撲か戦かを迫ったり、義時の顔を覗き込んで「何だったら眉毛そらせようか」「俺もそるよ。両方」と提案したりする姿はコミカルだし、義時も思わず気が抜けてしまった。

 朗らかな雰囲気も魅力的な義盛だが、和田一族が和田胤長(細川岳)の赦免を求めて御所に集結したときの凛々しい顔つきにはハッとさせられる。義村から「いっそのこと北条を倒して俺たちの鎌倉をつくるってのはどうだ」とけしかけられたときも、義村の「結構本気だ」という言葉を聞いて、目の色が強くなった。義盛を死なせたくないと願う実朝に「ここまでコケにされては、武士の名折れ」と言葉にする義盛の眼光も勇ましい。数々の戦に勝ち抜いてきた武士であることを呼び起こさせる表情だ。

 人々から頼られる勇猛果敢な武士である義盛は、頼朝や義時が脅威と捉える人物像に当てはまる。義時が義盛を滅ぼそうと考える一方で、義盛はそんな義時との絆を固く信じている。「ようやく俺たちは、望みの鎌倉殿を手に入れたのかもしれねえぞ」と話す義盛の顔つきは、ともに鎌倉を支えてきた義時を、鎌倉の明るい行く末を信じているように見える。

「政はお前に任せるよ。力がいる時は俺に言え」
「鎌倉の敵は、俺が討ち取る」
「これからも支え合っていこうぜ」

 ごまかしも偽りもない、純粋な義盛の言葉が義時の心に響く。

 義盛と同じく、義村も昔と変わらぬまま、権力争いの中で生き延びてきた。第40回では義村が自らの立ち回り方をついに言葉にする。義村の弟・胤義(岸田タツヤ)は実直な性格で、兄のやり方を好まない。胤義の追及に義村は答える。

「そうやって俺は生きてきた。上総、梶原、比企、畠山、幾人が滅んだ。三浦はまだ生き残ってる。つまりはそういうことだ」

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる