『鎌倉殿の13人』源実朝の秘めた思いが切なすぎる 三谷幸喜の鮮やかな和歌の解釈

『鎌倉殿の13人』実朝の切ない秘めた思い

 実朝は泰時に別の和歌を手渡した。その歌を詠む前、実朝は思いを馳せるように目を閉じる。

「大海の 磯もとどろに寄する浪 われて砕けて裂けて散るかも」

 退室する泰時を見送り続ける実朝の背中は寂しげだった。この和歌の本歌(古人の詠んだ歌をもとに作られた和歌の、もとうた)といわれる歌は『万葉集』に収録されている笠女郎の歌で、これもまた恋の歌だといわれている。だが、実朝が歌を詠む前に見せた切ない横顔と「散る」の響きからは、泰時への思いを断ち切ろうとしているようにも見える。いずれにせよ、実朝の思いは決して叶わない。

 実朝に手渡された和歌を前に、泰時は酒をあおる。あの場面で、仮に泰時が実朝の思いを受け入れようとしていたにしても、それぞれの立場から実朝の思いが成就することはないだろう。だが、せめて、実朝の秘めてきた思いを聞き優しく受け入れた千世が、実朝にとって心を開くことのできる相手となってほしいと願う。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる