『銀河英雄伝説』の魅力はキャラクターにあり! 対照的な2人の天才を支える盟友たち

『銀河英雄伝説』2人の天才を支える盟友たち

戦争嫌いの天才戦略家

 銀河帝国の圧政から独立し、民主主義の理念を打ち立てた自由惑星同盟側の主人公、ヤン・ウェンリーは戦争嫌いの軍人である。

 彼は、本当は歴史家になりたかったが、父の死で大学に行く余裕がなく、タダで歴史を学べるという理由で士官学校に入ったに過ぎない。しかし、まさに歴史を知る故か、戦略・戦術において類まれなる能力を発揮し、本人の意思とは裏腹に同盟軍の英雄となっていく。

 ヤンはラインハルトとは違い野心はなく、むしろ早く退役して年金生活をおくりたいと考えているような男だ。しかし、皮肉にも時代がそれを許さず、ヤンは次々に華々しい戦果を挙げては出世していき、国民からも「ミラクル・ヤン」などと呼ばれ、人気者になってしまう。

 民主制を敷く同盟では、政治家は人気取りにやっきになっている。ヤンの活躍は一部の政治家には脅威と見なされ、ヤンは味方陣営に度々足を引っ張られることになる。

 そんなヤンは、部下からの信頼がとても厚い。的確な判断力と誰とでもフランクに接する彼の人間性は多くの人の好感を得ている。ヤンは同盟の民主主義と平等の理念を大切にしている。彼は帝国からの亡命者の一族であるシェーンコップを重要な任務に抜擢するなど、出自にとらわれることはない。

 フレデリカ大尉を副官として熱く信頼しており、彼女の父がクーデターの首謀者になった時も、彼女を処分することなく副官として起用し続けたこともある。指揮官としてのヤンの懐の深さがよくわかるエピソードだ。

 戦略面での卓越したセンスとは裏腹に、ヤンの実生活はだらしがない。部下にも生活能力皆無だと思われているヤンだが、そんな彼の生活を支えているのは、被保護者のユリアンだ。明るく屈託のない性格で、しっかり者の彼なくしては、ヤンはまともな暮らしができないだろう。

 そんなユリアンはヤンを尊敬しており、彼の役に立ちたいと軍に志願する。戦争嫌いのヤンにとっては、好ましい決断ではないが、ユリアンの才覚は片鱗を見せ、同盟軍の危機を救うこともある。

 ヤンもラインハルトのように親友を戦争で失うが、決して孤独に陥ることがなかったのはユリアンの存在が大きいだろう。人間関係に恵まれていると言えるヤンだが、彼にとって不幸なのは、先を見通すその突出した知識と判断力のせいで軍人を辞めるわけにもいかなくなってしまうことだろう。誰よりも戦争が嫌いなのに、誰よりも戦争を遂行するのが上手いというのはあまりにも皮肉なことだ。

 卓越した人物であっても、ほんのわずかな歴史の流れ方によって、人生は翻弄される。ラインハルトはキルヒアイスの死がなければ、孤高の存在にはならなかっただろう。ヤンはもっと安定した時代に生まれていれば、すんなりと歴史研究家に収まっていたかもしれない。

 しかし、それでもこの2人の主人公をはじめ、誰もが現実から逃げずに責任ある生き方をやめない。『銀英伝』のキャラクターたちの生き様は、混迷の時代を生きる私たちをおおいに勇気づけてくれるだろう。

『銀河英雄伝説 Die Neue These』が織りなす重厚な政治劇 混迷の時代をいかに生きるか

田中芳樹の小説『銀河英雄伝説(以下、銀英伝)』をアニメ化した『銀河英雄伝説 Die Neue These』フォースシーズン「策謀…

■上映情報
『銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀』
第一章:9月30日(金)公開
第二章:10月28日(金)公開
第三章:11月25日(金)公開 各章3週間限定上映 ※一部劇場を除く
声の出演:宮野真守、鈴村健一、梶裕貴、諏訪部順一、小野大輔、中村悠一、川島得愛、遠藤綾、三木眞一郎、坂本真綾、花澤香菜、鈴木達央、石川界人、手塚秀彰、園崎未恵、野島健児、下山吉光 
原作:田中芳樹(東京創元社刊)
監督:多田俊介
制作:Production I.G
配給:松竹メディア事業部
製作:銀河英雄伝説 Die Neue These 製作委員会
©田中芳樹/銀河英雄伝説 Die Neue These 製作委員会
公式サイト:https://gineiden-anime.com/
公式Twitter:@gineidenanime

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