宮下兼史鷹、『ブレット・トレイン』の日本描写にワクワク 「最初からクライマックス」

宮下兼史鷹が『ブレットトレイン』を語る

 お笑いコンビ・宮下草薙のツッコミとして活躍する宮下兼史鷹。芸人としての顔以外にも、ラジオや舞台にも出演。おもちゃ収集が趣味、サブカルチャーに精通している無類の映画好きである彼の新連載『宮下兼史鷹のムービーコマンダー』がスタート。今回は、現在公開中の映画『ブレット・トレイン』と主演のブラッド・ピットについて語ってもらった。

「宮下兼史鷹のムービーコマンダー」第1回『ブレット・トレイン』

アクション映画としての工夫が満載

ブレット・トレイン

――本作は『デッドプール2』の監督であるデヴィッド・リーチが、長年自身もスタントをしてきた付き合いのあるブラッド・ピットと作り上げた映画ですね。アクション映画としての魅力はどうでしたか?

宮下兼史鷹(以下、宮下):僕もアクション映画は好きで結構観ているのですが、やはり出尽くしている感じは正直ありますよね。真面目にすごくアクションする系と、ちょっと悪ふざけが混じるようなアクションが系統としてあると思いますが、本作はどちらかと言えばちょっと悪ふざけが入っている。『デッドプール2』もそうでしたが、少しグロいのに笑える部分をとても多用しているので、そういうアクションが好きな人からしたら大好物な作品ですよね。僕はずっとニヤニヤしながら観ちゃいました。アクションの部分ではやはりすごく魅せ方が上手でしたね。電車の中というワンシチュエーションなので、工夫されている部分も多く見えて、“電車×アクション”でできることをほぼ全部やりきっている感じの映画です。電車アクションもので言えば、「列車出発の直前で相手を外に出す」という展開があるあるで……僕自身、やはりこういったジャンルであれば作品の中で一度は観たいシーンでもあるんです。その出された奴がじゃあどうするんだろう、呆然と立ち尽くすのか、それともここからどうやって乗るのか、みたいなところもちゃんと魅せてくれました。僕としては結構外に出してほしい人を出してくれた印象がありますね。

失いたくない、“なんちゃって日本”

――本作は“日本が舞台”という点でも話題になっていました。宮下さんは本作の日本描写をどう見ていますか?

宮下:僕は海外やハリウッドの映画で描く“日本”のちんちくりんさがすごく好きで。「いやいやいや、こんなんじゃないけどね」という。逆に真面目に監修して、製作側が「うまいこといった」と思っている作品でも、結果日本人が観たら「変じゃん」ってなると思いますし。そうじゃなくて、本作はおそらくあえてメタ的な感じで「ハリウッドの描く日本って変だよね」というのを“笑い”として使っているように僕は感じて、なんかそこがすごく良かったですね。新幹線の中から見える富士山も、まぁそんなふうに見えないだろうって(笑)。“日本に似た日本じゃない場所”が僕はすごく面白かったです。列車が止まった時に霧が立ち込めている、とんでもない雰囲気の駅があったりね。ここまで時代も進んでいろいろ監修もできるし、おそらくデータとして「日本ってこういうもの」っていうのがあるんだから「もっと忠実にやれよ」って声も出ていますが、僕は逆に、この“変な日本”はむしろハリウッドが日本を描かないと見えない日本だと思っていて。日本を見たかったら、日本の映画を観ればいいですし。なので、そういう意味で僕はこの文化は途絶えないでほしいなと、強く思っています。なんかワクワクしちゃうんですよね、“変な日本”。それを見て、「日本はこんなとこなんだ」って思っている海外の方も中にはいるだろうなぁというのも含め面白いですね。多分、そこを揶揄する人もいるとは思いますが、それは野暮かなぁと思うんですよ。

――確かに。京都駅の風貌もすごかったですが、映画冒頭でピットが電話をしながら歩く街並みも、やはり表に屋台が出ていてSF的な様子でしたね。

宮下:そうですね。いつまで経っても『ブレードランナー』が抜けてない感じというかね(笑)。でも、まあおそらく海外の人からしたらそれがいつまでも残っている日本への憧れなのかもしれません。

――本作はかなり多くの登場人物が登場しますが、注目したキャストは?

宮下:タンジェリン役のアーロン・テイラー=ジョンソンですね。彼は『キック・アス』の主演も勤めていましたが、いやぁかっこいいですね。彼が出演すること自体は事前に知っていましたが、映画を観ても一瞬「あれ? 誰だろう?」って思うくらい印象が違くて驚きました。髭が少し増えるだけであんなに渋みが出るんですね。多分、ちょび髭をつけさせたら右に出る者は今いないんじゃないかなっていうくらい、ちょび髭が似合っていました。あと、相棒のレモン役のブライアン・タイリー・ヘンリー。『きかんしゃトーマス』を引用したセリフが多くてかなり印象に残っています。

――エルダー役の真田広之さんはいかがでしたか?

宮下:めちゃめちゃかっこよかったですね、『ラスト サムライ』より“ラストサムライ”をやってるなってくらい。刀を使って電車でチャンバラをするのは、やはり好きな方からしたらものすごく刺さる映像だと思います。電車での戦闘って、結構物語の終盤やクライマックスで描かれることが多い印象なんですよね。主にマカロニ・ウェスタンなどのジャンルでは、電車=ラストステージみたいな感じがある。でも、本作はそれで言えばずっと“ラストステージ”なんですよね。もう最初から最終まで、ずっとクライマックスの部分を観させられる。初っ端から興奮できる部分が、とてもテンションの上がる映画だと感じました。

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