『ブレット・トレイン』は伊坂幸太郎の原作をどうアレンジした? 監督に聞く制作の裏側

『ブレット・トレイン』監督に聞く制作の裏側

 ブラッド・ピット主演映画『ブレット・トレイン』が公開中だ。

 本作は、伊坂幸太郎のベストセラー小説『マリアビートル』を、『デッドプール2』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のデヴィッド・リーチ監督が実写化したミステリーアクション。日本の新幹線を舞台に、乗り合わせた殺し屋たちの任務と因縁が交錯する。

 リアルサウンド映画部では、主要キャストと共に来日したリーチ監督にインタビュー。元スタントマンという異色の経歴を持つ監督ならではのこだわりや、8年ぶりに訪れたという日本に対する印象を聞いた。

ブラッド・ピットを“冴えない中年”に見せるために

――ブラッド・ピット演じるレディバグは、運に見放された冴えない中年の殺し屋です。世間一般のピットのイメージとは異なるように思いますが、なぜ彼を選ばれたのでしょうか?

デヴィッド・リーチ(以下、リーチ):脚本を読んだときから、レディバグ役の候補はブラッド以外頭にありませんでした。長年彼と仕事をしてきてコメディのセンスがあることは知っていましたし、普段彼が期待されているイメージに反するような役を楽しんでくれると分かっていたからです。実際、ブラッドも脚本を読んだときに笑ってくれて、すぐにやりたいと言ってくれました。

――バケットハットに黒縁メガネのビジュアルが新鮮でした。

リーチ:バケットハットはブラッドのアイデアです。彼はレディバグを演じることにワクワクしていて、帽子以外にもたくさんのアイデアを出してくれました。僕たちは、ブラッドが世界で最も有名な人物の一人であるというイメージを払拭させなければならなかったのですが、バケットハットがその役割を果たしてくれました。

――エルダー役の真田広之には監督が直接オファーされたと聞きました。以前にもお仕事をされていたのでしょうか?

リーチ:ヒロ(真田広之)とは、『スピード・レーサー』(2008年)と『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)で一緒に仕事をしました。彼はアクション面でもレジェンドクラスですし、エルダー役は彼しか考えられませんでした。それに、ブラッドと僕はこのプロジェクトを始めるときに「この映画に関わる人はみんな心の優しい、良い人がいいね」という話をしていたんです(笑)。だから、ヒロは初めからリストの一番上にいました。

――本作は、各キャラクターの持つ武器や戦闘スタイルのバリエーションが豊富ですが、どのファイトシーンがお気に入りですか?

リーチ:一番を決めるのは難しいですが……“今日の僕”が選ぶとしたら、ホーネット(ザジー・ビーツ)とレディバグのシーンですね。2人のセリフのやり取りも面白くて気に入っています。好きなシークエンスはたくさんあるので、あくまで“今日の僕”が選ぶとしたらですが(笑)。例えば、静かにしなければいけない車両でのレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)とレディバグの対決も好きです。

――レモンは、原作を読んだ際のイメージと最も異なるキャラクター造形だったのですが、観終わったあとは、あのレモン以外考えられなくなっていました。

リーチ:そう言ってもらえてとても嬉しいです。レモンと相棒のタンジェリンは、原作では違った力関係で、タンジェリンの方が賢くて、レモンはちょっとお馬鹿さんという印象を受けます。ですが、コンビとして考えたときに、その関係性はあまり掘り下げたいと思えるものではありませんでした。そこで、レモンとタンジェリンのパワーバランスを平等にすることで、兄弟愛のストーリーがより強まるんじゃないかと思ったんです。あの2人に対して、エモーショナルな気持ちを持ってもらいたいと考えて、ああいう形になりました。

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