『カーズ・オン・ザ・ロード』と映画シリーズのつながり 共通するテーマは“遠回り”
もともとラジエーター・スプリングスのモデルとなったのは、実際にアメリカの8州を繋いで「マザー・ロード」とも呼ばれ、多くのドライバーに利用されていた国道「ルート66」沿いの「セリグマン」などの町や自然だといわれている。
「ルート66」は、より利便性のある「州間高速道路」の完成によって利用者が激減し、80年代に一度廃線となった。だが、“歴史的街道”として観光的な価値から復活させようという動きが起こり、あえて遠回りして、旅の過程がゆったりと楽しめるような道として、現在は観光客を中心に親しまれるようになっている。
“旅の過程こそを楽しむ”、“人生の一つひとつの出来事を味わう”という、目的以外のところにも価値を見出す、一種の能動的な哲学の提示。本シリーズは、まさにそれを象徴する、旅の過程そのものがエピソードとして並んでいるという意味において、映画シリーズの哲学をかたちにしたものだといえるだろう。
とはいえ、1話完結形式で綴られていく、一つひとつのエピソードは、およそ10分ほどのボリュームであり、映画シリーズほど深刻な展開になることもない。これは、おそらく幼い子どものいる家庭をターゲットとして、楽しく鑑賞してもらうことを想定しているからだと思われる。
しかし、大人も楽しめるつくりになっているのがピクサー作品。本シリーズでは、映画『シャイニング』(1980年)や『マッドマックス/サンダードーム』(1985年)のパロディなど、小さな子どもが知らないネタが登場するなど、ときにスタッフの趣味が暴走していると感じられるところが楽しい点だ。
■配信情報
『カーズ・オン・ザ・ロード』
ディズニープラスで独占配信中
©2022 Disney/Pixar