『カーズ・オン・ザ・ロード』と映画シリーズのつながり 共通するテーマは“遠回り”

『カーズ』シリーズに共通するテーマとは

 映画『モンスターズ・インク』、『モンスターズ・ユニバーシティ』の世界観を利用し、ディズニープラスの配信作品としてシリーズ化した『モンスターズ・ワーク』に続き、新たなピクサーの配信シリーズ作品に選ばれたのは、『カーズ』だった。そのタイトルは、『カーズ・オン・ザ・ロード』。

 ここでは、現在配信されている『カーズ・オン・ザ・ロード』の内容を紹介しながら、映画シリーズとのつながりや、共通するテーマについて考えていきたい。

カーズ・オン・ザ・ロード

 作品世界に登場するキャラクターが、“擬人化された車”ばかりの、本当の意味での“車社会”を描いた、映画『カーズ』シリーズ。映画3作では、レーサー“ライトニング・マックイーン”を主人公に、ルーキー時代からベテラン時代までの、彼の充実したキャリアが描かれた。

 そして、『カーズ/クロスロード』(2017年)では、マックイーンがレースを引退まではしないものの、新たなキャリアとして後続の育成に従事することを示唆する結末を迎えた。バチバチの雰囲気を発していた頃のマックイーンの姿を思うと、ちょっと寂しいところがあるが、それだけにいっそう趣深いラストだったともいえよう。

 本シリーズ『カーズ・オン・ザ・ロード』は、登場するキャラクターを確認する限り、『カーズ/クロスロード』以後、もしくはその結末でマックイーンがボディカラーを変更する少し前の出来事を描いていると推定できる。どちらにせよ、マックイーンを象徴する鮮やかな赤を纏った姿をまた見せてくれるのは、嬉しいことだ。

カーズ・オン・ザ・ロード

 物語は、マックイーンが親友メーターとともに、メーターの姉の結婚式に出席するべく、ホームタウンである「ラジエーター・スプリングス」から遠隔地まで、何日ものロード・トリップをするというもの。基本的に平和でゆったりとしていると同時に、非常にアメリカ的な内容となっている。マックイーンとメーターがともに街道を旅するというのは、現実の人間社会でいえば、友達同士の中年男性二人が、並んで何日も同じ空間を共有することを意味している。そう考えると、非常に微笑ましい光景に感じられてくる。

 飛行機を使えばすぐに着くところだが、あえて陸路を選ぶ。この遠回りこそが、『カーズ』第1作(2006年)で描かれたテーマに通底するものだ。かつてのルーキー時代、レースのチャンピオンになる目標しか見えず、周囲の者たちを気づかうことができなかったマックイーンは、成り行きで道を外れ、小さな町ラジエーター・スプリングスに滞在する。そこで彼は、自分が活躍するためには多くの助けが必要なことや、自分も他者のために何かをしなければならないと考えようになった。その精神が、『カーズ/クロスロード』でのキャリアの選択へと繋がったのだ。

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