『初恋の悪魔』林遣都演じる鹿浜の人間的な成長 物語に散りばめられた数々の疑問点
物語が佳境へと突入した『初恋の悪魔』(日本テレビ系)。9月17日に放送された第9話では、雪松(伊藤英明)の家の前で張り込みをする馬淵(仲野太賀)と小鳥(柄本佑)、3つの殺人事件について捜査を続ける鹿浜(林遣都)と別人格のままの摘木(松岡茉優)、そして森園(安田顕)の5人が、同じところへとたどり着く。そのカギとなったのは、やはり前回のラストで意味深に登場した雪松の息子・弓弦(菅生新樹)であった。
雪松の家から出てきた弓弦を尾行したものの、何の手掛かりも得られなかった馬淵と小鳥。一方で鹿浜は、朝陽(毎熊克哉)が転落死したホテルへと向かい、当時を覚えている清掃員から話を聞く。朝陽が転落する前、雪松を目撃したというのだ。そして3つの事件の被害者の家を訪ねた森園は、彼らの共通点を見つけ出す。そんななか、再び外出をした弓弦の後を追いかけた馬淵と小鳥は、泥だらけのスニーカーを捨てようとしていた弓弦に話を聞く。弓弦の口から発せられたのは、「父が殺しました」という言葉だった。
3人の被害者たちは皆、同じアウトドアクラブに入会していた。被害者に共通点があることから、雪松がシリアルキラーであると力説する森園に対し、鹿浜は言う。「生まれついて猟奇的な人間なんていません。仮にいたとしても、僕たちはその理由を考えることを放棄してはいけない」。第1話で馬淵が初めて家を訪ねてきたときに「犯罪には2種類ある。美しい犯罪と、醜い犯罪だ」と語りながら不敵な笑みを浮かべ、凶悪犯罪への強い憧れを持ち、隣人の森園をシリアルキラーだと信じて疑わなかった男と同一人物とは思えないその言葉に、鹿浜というキャラクターの人間的な成長を感じずにいられない。
それはこれまで劇中で何度も登場してきた“マーヤーのヴェールを剥ぎ取る”という行為にもよく似ている。事件を前にして、先入観を捨て去って本質を見抜く。これまではその本質とは“事件の真相”ただ一択であった。しかし今回、鹿浜は事件の真相などどうでもいいのだとはっきりと言い放つ。人を殺す、人が殺される。あらゆる事件の真相には常に“人”が存在する。その“人”から目を背けずに向き合うこと。馬淵や小鳥との友情に、摘木(別人格)への恋心。わかりやすくそこには、人と関わることで人と向き合えるようになった鹿浜がいるわけだ。
終盤、まさに案の定といわんばかりにハサミのコレクションルームに匿われていた弓弦が牙を剥く。おおよそ彼が馬淵たちに語った、父が殺したという一連のシナリオは虚構に過ぎず、彼こそが一連の事件の犯人だという筋立てが推察できる。その一方でまた、細かな気になる描写も散りばめられる。家の前に停めた車を動かしてくれと言われたとき、なぜ小鳥は鍵を取る前に帽子を動かしたのだろうか。そして小鳥の握ったおにぎりと味噌汁の匂いを嗅ぐ摘木。ラストカットの小鳥の動きもなかなか不可思議なものがあり、それらの意味は最終話で回収されるのだろうか。
■放送情報
『初恋の悪魔』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00~22:54放送
出演:林遣都、仲野太賀、松岡茉優、柄本佑、佐久間由衣、味方良介、安田顕、田中裕子、伊藤英明、毎熊克哉、菅生新樹
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生ほか
プロデューサー:次屋尚ほか
チーフプロデューサー:三上絵里子
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
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