映画館に行っても観たい作品がない! 空前の「洋画枯れ」は来年以降も続く

空前の「洋画枯れ」は来年以降も続く

興行ランキング表

 先週末の動員ランキングは、『ONE PIECE FILM RED』が土日2日間で動員35万5000人、興収4億9400万円をあげて6週連続1位に。公開から37日間の累計動員は994万8778人、累計興収138億6854万4850円となっている。初登場で最上位に入ったのは2位の『HiGH&LOW THE WORST X』で、土日2日間の動員は10万7000人、興収は1億5000万円となっている。

 さて、トップ10の作品を見渡して気がつかされるのは、1位の『ONE PIECE FILM RED』(6週目)だけでなく、『トップガン マーヴェリック』(16週目)、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(7週目)、『ミニオンズ フィーバー』(9週目)、『キングダム2 遥かなる大地へ』(9週目)と、公開から2ヶ月近くかそれ以上経った作品がまだ半分を占めていることだ。理由はシンプルで、特にメジャースタジオの外国映画に関しては、8月に入ってから『ブレット・トレイン』(先週末3位)、『NOPE/ノープ』(先週末トップ10圏外)、『ビースト』(公開週にもかかわらず先週末トップ10圏外)くらいしか目ぼしい新作がなかったのだ。これは、はっきり異常事態である。

 その理由は、日本の配給会社が仕事をしていないのではなく、そもそもハリウッドのメジャースタジオの作品供給数がここにきて激減していることにある。コロナ禍に入る前は年間百数十本あった劇場公開されるメジャースタジオによる新作映画は、2022年は73本(もちろんその中には日本公開されない作品もあるわけだが)。これがコロナ禍による一時的な製作体制の混乱によるものでないことは、2023年も同水準の75本しか予定されてないことから明らか。コロナ禍に多くの作品が配信スルーされて以降、メジャースタジオは確実に製作本数を減らしていて、予定されている新作の劇場公開作品もその多くがフランチャイズ作品か続編となっている。(※)

 また、ディズニー作品(及びピクサー作品)のように明らかにプロモーションの重心を配信プラットフォームに移していて、新作を劇場公開しても、コロナ禍以前のようにその作品の存在が日本中に広く知れわたることがないというここ数年起こっている現象も見逃せない。

 興味深いのは、そんな状況下で期待されたほどの出足ではなかった『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が、9月14日までに動員402万6297人、興収60億875万8760円をあげて、ジリジリと興収60億円を突破したこと。カップルやファミリー層などを筆頭に、人々は映画館にしっかり戻ってきている。問題は、そういう一般的な客層の人たちが映画館に足を運んでも、気軽に楽しめる大作映画の選択肢が極端に限られていることだ。例えば、もしコロナ禍以前のようにディズニー作品(及びピクサー作品)が劇場への動員力を維持していたら、『ONE PIECE FILM RED』や『トップガン マーヴェリック』はここまで圧勝していただろうか?

参照

※. https://www.nytimes.com/2022/09/04/business/movie-theaters-closing-bankruptcy.html?smid=tw-share

■公開情報
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』
全国公開中
監督:コリン・トレボロウ
脚本:エミリー・カーマイケル、コリン・トレボロウ
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、サム・ニール、ディワンダ・ワイズ、マムドゥ・アチー、BD・ウォン、オマール・シー、イザベラ・サーモン、キャンベル・スコット、ジャスティス・スミス、スコット・ヘイズ、ディーチェン・ラックマン、ダニエラ・ピネダ
キャラクター原案:マイケル・クライトン
ストーリー原案:デレク・コノリー、コリン・トレヴォロウ
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、アレクサンドラ・ダービシャー、コリン・トレヴォロウ
配給:東宝東和
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