波瑠×間宮祥太朗の最強バディにガッツポーズ 一味違った『魔法のリノベ』の恋愛の描き方

『魔法のリノベ』一味違う恋愛の描き方

 “人生こじらせた”どうしの2人、小梅(波瑠)、と玄之介(間宮祥太朗)の恋が、ついに動き出した。『魔法のリノベ』(カンテレ・フジテレビ系)は、リノベーションの依頼者たちの物語と、小梅・玄之介をはじめとする登場人物たちの物語をシンクロさせ交差させる「つづれ織り」が見事な作品だが、終章に向けての重要回となる第7話・8話の構成はまた一段と“特異”だった。

 第7話では、弟・青空(葉山奨之)の結婚式に出席するため小梅が静岡の実家に帰郷し、ついでに実家の二世帯住宅リノベに関わることになる。続く第8話では時間が巻き戻り、小梅が不在のあいだの「まるふく工務店」の様子が描かれた。つまりこの2週は「2話でひとつの物語」と言える構成となっている。

 小梅は、これまで毎日一緒に営業で歩き回っていた玄之介が隣にいないことが心許ない。第7話で、実家のリノベ問題が長引きそうで東京に戻るのが遅れることを玄之介に電話で告げたとき、てっきり「小梅さんがいないとダメなんです」と泣きつかれると思いきや、返ってきたのは「こっちのことは僕らが何とかしますから」という、どっしりした言葉。肩透かしを食らった。

 そして第8話では、同じく玄之介と小梅が電話しているシーンが、横から耳をそばだてる竜之介(吉野北人)の視点で描かれる。思いを寄せる小梅と初めてタッグを組んで臨むリノベ案件に心はずむ竜之介だったが、小梅の帰りが遅れることを玄之介が承諾してしまったことに舌打ちをする。

 第7話・8話ではこうした、同じシーンを異なる複数の人物の「主観」で描く手法がたびたび使われた。黒澤明の代表作にあやかって、ハリウッド界隈で「羅生門スタイル」と呼ばれるこの手法は、登場人物それぞれの人生が粒立って、各々の心の動きが交差して紡ぎ上げるこのドラマに見事にフィットしている。

 「羅生門スタイル」は、離れ離れになって互いの不在を寂しく思う主人公2人の心の動きを、より際立たせる。また“恋の4角関係”に参戦してきた竜之介とミコト(SUMIRE)の心情がメインストーリーに交差する面白さや、蔵之介(遠藤憲一)、小出(近藤芳正)、越後(本多力)から成る「まるふく」メンバーに久保寺(金子大地)を加えたコメディパートの可笑しさを倍増させていた。

 竜之介が小梅の実家に押しかけていると察した久保寺が、小梅に電話をするシーン。第7話では、小梅の横にいた竜之介が信行寺家の庭のリノベに用いる素材をひらめいて、「小枝、砂」とつぶやいた。第8話の同シーンでは、「まるふく工務店」でスマホをスピーカーモードにしている久保寺の姿が映される。スピーカーから聴こえる「小枝、砂」を小出と越後が「声出すな」と聴き違え、竜之介が小梅の家族を監禁して脅しているという妄想にとらわれてパニックを起こす。このドラマが始まって以来、屈指のバカバカしさで、爆笑してしまった。

 静岡と東京に離れた小梅と玄之介は、同じ“まるふクエスト”の夢を見たり、互いに「こんなとき玄之介さんだったら」「小梅さんだったら」とついつい考えてしまう。小梅は、これまで「営業のテコ入れ」という名のもとに玄之介をリードしてきたつもりが、今ではすっかり自分のほうが玄之介を頼りにしていることに気づく。

 いっぽう玄之介は、「小梅さんがいなくてもしっかりやれるまるふくでありたい。そのうえで小梅さんにいてほしい」と言い、自らの成長を小梅に見せようと奮闘する。そして実際、営業マンとして、人間として、目覚ましい成長を遂げている。2人は互いを補いあい、高めあい、気がつけば「最強のバディ」となっていた。

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