『メイドインアビス』の独特な世界観を構築する価値のシステム リコの選択が物語の鍵に?

『メイドインアビス』リコの選択が物語の鍵?

 TOKYO MXほかにてTVアニメ『メイドインアビス 烈日の黄金郷』の第10話「拾うものすべて」が放送された。奥深いストーリーや美麗な作画に毎話放送後には多くの感想が寄せられており、注目度の高さがうかがえる。

 第2期のテーマとなっているのは価値の選択だ。成れ果て村では、住人たちは価値を大切にしており、他人の価値を傷つけた場合には精算と呼ばれる価値の均衡を保つための儀式が行われる。ナナチもまた自らを売ることで、ミーティという価値を手に入れたのだった。それは『鋼の錬金術師』に登場するような等価交換ともまた異なる価値のシステムであり、『メイドインアビス』の独特な世界観を作り上げている。

 ナナチにとってミーティは宝物であり、かけがえのない友人でもあった。一度はレグの火葬砲でお別れをしたが、成れ果て村で複製されたミーティと再会を果たした。ナナチは自らと引き換えにミーティといることを選んだが、ファプタの襲来によって、記憶と人格を取り戻したベラフから記憶を授けられた上で解放される。しかし、ベラフから告げられたのは「境界線を超えるとミーティは消えてしまう」ということ。成れ果て村はイルミューイの身体の中であり、村の体内で作られたものは村の中でしか存在することができないのだ。

 念願の再会を果たしたナナチにとって、別れの決断は容易ではなかったはずだが、ナナチはリコたちと旅を続けることを選択した。レグの力に頼っていた以前とは違って、今回は自分の手でお別れをすることができるのが唯一の救いだ。消えゆくミーティに涙ながらに話しかけるナナチの心情を思うと切ない。ミーティという存在の価値と引き換えに、リコたちとの旅を選んだナナチ。これもまた価値の選択に他ならない。

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