『メイドインアビス』平田広明の怪演が恐怖を助長 ワズキャン、ベラフ、ヴエコの願いの形

『メイドインアビス』平田広明の怪演が光る

 TVアニメ『メイドインアビス 烈日の黄金郷』の第8話「願いの形」が、TOKYO MXほかにて放送された。「欲望の揺籃」によって永遠に子を生み続ける身体になってしまったイルミューイ。その一方で、ヴエコらガンジャ隊の隊員は「水もどき」に苛まれ倒れていく。しかし、その窮地を救ったのはワズキャンだった。「水もどき」から回復したヴエコの前には異形な生物と化したイルミューイの姿が。そこでヴエコたちが食べていた香ばしいものの正体がイルミューイの子供であったことを知るというのが、第8話の大まかなあらすじだ。

 第8話では、ワズキャン、ベラフ、ヴエコの三者三様の願いの形が描かれた。ワズキャンはこれまではノリは軽いが、堅実なリーダーシップでガンジャ隊を率いていた人物。そんな彼が、生きるためにイルミューイの思いを利用して、産み落とされた子供をガンジャ隊に捧げていた。ヴエコに対して「大丈夫、みんなにも振る舞ったさ」と自分の行為を気にも留めずに淡々と言い放つワズキャンには少々恐怖を覚えるが、決して彼がしていることが間違いとも言い切れないのが難しい。そして、ワズキャンを演じる平田広明の冷徹な言い回しが素晴らしく恐怖を助長していた。

 対して、ベラフはイルミューイが生んだ子供を食べてしまったことへの罪悪感から精神が崩壊。ガンジャ隊では言語の通訳や解読などを担当し、理知的なポジションを担っていたが、真面目すぎるがゆえに受け入れられなかったのだろう。最後には「人間ではいられない」とイルミューイに許しを請うようにすがりつき、現在の成れ果ての姿になってしまう。一見合理主義的にも思えるベラフだが、最後まで人間らしい振る舞いをしていたのは彼だったのかもしれない。

 そして、イルミューイと母娘のような関係性だったヴエコ。ベラフ同様に罪悪感に苛まれながらも、受け入れざるを得ない自分に心を悩ませていた。イルミューイの願いを踏みにじりながら、生きながらえ続けるこの現状はヴエコにとっては何よりも地獄だろう。最終的には理想郷を作り上げようとするワズキャンの願いを拒んだヴエコ。「なら、君はどうしたいんだい?」というワズキャンの問いに、ヴエコは自らの命を絶つことを決意するが、間一髪でワズキャンに助けられ、“目の奥”に幽閉される。ヴエコにとってはイルミューイが幸せになることが何よりも望んでいたことだったはず。ヴエコが最後に下した決断は理解こそできるが、何の解決にもなっていなかったのが虚しい。むしろそれしかできなかったというべきだろう。

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