yonawo 荒谷翔大×斉藤雄哉が『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』を観て“愛”をテーマに語る
第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』が現在、劇場公開中だ。本作は、船乗りのヤコブ(ハイス・ナバー)とその友人による、「最初にカフェに入ってきた女性と結婚する」という賭けから始まる大人のラブロマンス。『心と体と』で第67回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したイルディコー・エニェディが脚本、監督を務め、『アデル、ブルーは熱い色』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したレア・セドゥが主演を務めた。
今回リアルサウンド映画部では、11月9日に3rdアルバム『Yonawo House』をリリースするyonawoの荒谷翔大(Vo)と斉藤雄哉(Gt)にインタビューを行った。本作のように恋人を翻弄しっぱなしのヒロインに、自分だったらどうやって向き合っていくのかなど、本作の感想を語り合ってもらった。
「翻弄されて拗らせてる主人公がかわいい(笑)」
――映画を観ていかがでしたか?
荒谷翔大(以下、荒谷):どこを切り取っても画がすごく素敵だなと思いました。英語とフランス語を話していた気がするんですけど、どこの映画なんですか?
――フランスとドイツのハンブルクが舞台ですね。船乗りって、公用語が英語らしいです。
荒谷:なるほど。リジー役のレア・セドゥさんは魅力的だと思うんですけど、翻弄されている男性側の感じが、めちゃくちゃ強面の大型犬みたいでかわいいなと思いました(笑)。
――主人公のヤコブですね(笑)。
荒谷:ヤコブは精神的にまいっていっちゃうけど、ずっとリジーを愛し続けている姿が愛おしかったです。女性の目線が意図的に描写されていないというのは後から知りましたが、なおさら男性目線で入り込めたのでとても楽しめました。女性の勘ぐる感じとかも、僕らはヤコブの気持ちになって観るからモヤモヤしましたね(笑)。
――斉藤さんはいかがでしたか?
斉藤雄哉(以下、斉藤):僕は小説が好きなので、章立てのような構成だったのが本を読む感覚に近くて観やすかったです。個人的にヤコブは、女の人のことを心配しすぎたり、ちょっと不器用だったり、男の良くないところが全部詰まっていたなって。
荒谷:終始いじけてますもんね(笑)。
斉藤:そういう男の嫌な部分がはっきり描かれているのを自分と重ねてしまって、ちょっと「うっ……」ってなりました(笑)。
――ヤコブは海に出るとすごく頼りになる船長なんだけど、陸に上がって奥さんのリジーと一緒にいると男の脆さが出ますよね。
斉藤:仕事はできるけど……というところも男っぽい(笑)。
――その脆さに身に覚えがある?
斉藤:そうですね。思い出して、すごい嫌だなと思いました(笑)。いらない心配しちゃったり、すごい嫉妬しちゃったりとか。
荒谷:それはみんな結構あるんじゃないですか? 今何してんだろうって勘ぐったりとか。他人と比べられないけど、自分では気にする方だと思うので、僕も共感できました。
ー-お二人が印象に残ったシーンを教えてください。
荒谷:冒頭と最後のシーンで流れる言葉はだいぶ印象に残っています。「もし息子ができたら僕はこういうことを言うだろう」みたいな。自分の中で解釈はできていないですけど、シンプルに頭の中に残っていて。あと最後の汽車で2人で逃げるシーン。リジーは一体、ヤコブをどう思っていたのか最後までわからない余韻が残るラストが印象的でした。
斉藤:警察のところに行った場面とか、嘘をつかれているかもというシーンがいくつか出てきますが、一度だけ奥さんの前でヤコブがすごくキレ散らかした瞬間はすごく印象に残っています。本当はすごく優しいけど、お互いに不満を伝えられないのが続くと、変わってしまうんだなと思いました。
――監督が映画の資料で「とてもすてきな小箱をプレゼントされたとして、それが開けられなかったらあなたはどうしますか?」と言っていて。それはおそらくリジーのことなんですけど、ヤコブは開けられないから爆発しちゃったんですよね。リジーという女性についてはどう思います?
荒谷:いやー……僕だったら付き合ってられないですね。ちょっと厳しいです(笑)。とにかく思わせぶりじゃないですか。ヤコブがいじけていたところに共感したんですが、「飲み屋で知り合った若い男の子に『たばことチョコレートって相性良いよ』的なこと言われたんだよね」ってさらっと話したりとか。「愛人にはあなた向いてないわよね」みたいなのもあって、おそらくヤコブを挑発しているつもりはないのかもしれないけど、「どういうこと???」って感じでした(笑)。
――どんな男に勧められたんだろうとか、ヤコブにしたらいろいろ想像したんでしょうね。
荒谷:あと、「キスの仕方知っているね」みたいなことをリジーが言って、それに対してヤコブが「誰と比べてる? 台無しにしないで」と言ったシーンもありましたよね。男も隠しすぎな部分もあるけど、どちらもめちゃくちゃ恋愛上級者と初心者だなって。
――恋愛の上級者と初心者(笑)。それは試合にならないですね。付き合っている彼女から「チョコレートとお酒の相性良いって若い男に聞いたんだけど」と言われたら、どう反応しますか?
荒谷:「あーそうなんだ、試してみようかな」とか言いますかね。でも、ヤコブもこっそり試してると思います(笑)。
斉藤:そうね。
荒谷:夜、彼女が寝たのを確認してから(笑)。ヤコブは意地を張って聞かないけど、僕は普通に聞きますね。「どんな感じだったの? いい人だった?」って聞いて、普通にそれで話してくれるのなら「あーよかったね」ってなります。
――大丈夫だなというのはそのやりとりでわかるんですね。
荒谷:そういう会話をして普通に話してくれたらそれだけなので。何かあったら話せないかなって思いますね。
――ちゃんと話すことが大切?
荒谷:ヤコブは自分で妄想して、意地を張って話さないからちょっと拗らせるのかなと思います(笑)。
――それは男の見栄だったりもするだろうし、恋愛初心者だからどう聞いていいのかわからないというのもありそうです。
斉藤:でも僕はリジーを観ていて、多分こういう態度をとる人は実際、相手のことを気になっているんだろうなって思いました。すごく思わせぶりな感じはするけど、ヤコブのことをちゃんと気になっているし、多分リジーも素直に言えないと思うから。でも多分合ってないですよね、この2人(笑)。