レア・セドゥがスクリーンを独占する 『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』で存分に堪能

レア・セドゥがスクリーンを独占する

 『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』のレア・セドゥには、まるでリリとドーラという、エニェディ映画における2つのペルソナが同時に存在するかのようだ。彼女は船乗りの夫を待ち続ける貞淑な妻かと思えば、ひと度外に出ると誰とどんな交友関係を持っているのかも定かではない。「愛してない」と言ったかと思えば、次の瞬間には濃密に愛を交わし合う。海を知り尽くしたヤコブにとって、リジーは波よりも不可解な存在だ。セドゥはあの不機嫌そうな顔や、時には驚くほど無防備な笑顔を見せ、ヤコブが知る由のないリジーの複雑さを体現し、あらゆる場面でスクリーンを独占する。近年のセドゥは『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でジェームズ・ボンドを攻略し、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ではウェス・アンダーソン映画を占領。『ルーベ、嘆きの光』『レア・セドゥのいつわり』の2作でアルノー・デプレシャンを籠絡するなど、絶好調だ。

 ヤコブは結婚生活を通じて“人生とは舵取りもままならない航海”と達観する。しかし、彼は男らしさという虚勢を捨て、本当の彼女と向き合ったのだろうか? ここには理解されることもなければ自由でいることも許されないリジーの“生きづらさ”があり、レア・セドゥの豊富なニュアンスによってこのヒロインは形を成すのである。キャリアの1つのピークに到達しつつあると言っていい彼女の充実ぶりを存分に堪能してもらいたい。

■公開情報
『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』
8月12日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、ユーロスペースほか全国公開
監督・脚本:イルディコー・エニェディ
出演:レア・セドゥ、ハイス・ナバー、ルイ・ガレル、セルジオ・ルビーニ、ルナ・ウェドラー
プロデューサー:モニカ・メーチ
原作:ミラン・フスト
撮影:マルツェル・レーブ
音楽:アダム・バラージュ
配給:彩プロ
2021/ハンガリー・ドイツ・フランス・イタリア/英語・フランス語・オランダ語・ドイツ語・イタリア語/シネマスコープ/169分/原題:A felesegem tortenete/PG-12
(c)2021 Inforg-M&M Film – Komplizen Film – Palosanto Films – Pyramide Productions – RAI Cinema – ARTE France Cinema – WDR/Arte
公式サイト:https://mywife.ayapro.ne.jp/

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