『よふかしのうた』アキラと重なる花守ゆみりの声優観 キャラの目線を取り込む演技力
7月より放送中のアニメ『よふかしのうた』に、主人公・夜守コウの幼なじみ・朝井アキラ役で出演している花守ゆみり。コウとは同じ団地に住む幼なじみで、早朝4時に起きて登校する超朝型のライフスタイルだったことで、コウたちのよふかしに参加することに……。コウの気持ちに寄り添う姿は、実に好感度が高い。
『よふかしのうた』は、『だがしかし』のアニメ化でも話題を集めた、コトヤマ原作の漫画。『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載中だ。
不登校になったことをきっかけに不眠症となった中学2年生男子の夜守コウは、深夜に街を徘徊していた際に吸血鬼の少女・七草ナズナと出会い、彼女に恋をすることで自らも吸血鬼になろうとする。そんなコウの幼なじみで中学2年生女子の朝井アキラを、花守ゆみりが演じている。アキラは、アニメ第2話のラストから登場。コウが不登校になったことをずっと気にかけていて、ナズナとの関係や深夜に何をやっているのかなど心配するが、コウが自分に話してくれた夢を肯定する。
花守は、公式サイトで「アキラはコウにとって、きっと自分が持てなくなってしまった当たり前の象徴のような女の子なのだと思います。けれど、そんな彼女もまたどこか大切なものを欠いていて、その凹があるからこそ『よふかし』を受け入れてくれる。そんなアキラとコウの関係を、ひりひりと感じていただけるよう頑張ります」とコメント。(※1)少々大人びたテンション低めのクールな雰囲気でありながら、コウを気にかける乙女の表情も見せるアキラ。花守はこれまでにもクールなタイプを演じる機会が多く、『かぐや様は告らせたい』シリーズの早坂愛、『かげきしょうじょ!!』の奈良田愛など演じてきたが、簡単にクールとひとくくりにはできない違いを自然に感じさせるのが、花守が優れている点だろう。
花守の代表作である『ゆるキャン△』の各務原なでしこ役に関するインタビューで、「彼女が見たものに対して、表情がコロコロ変わるところを表現したい想いがあり、演技のテンプレートを作らないようにして演じさせていただきました。(中略)作り込んで自分の中で勝手にルールを作ってしまったら、かわいさが決まったものになってしまいそうだと。見て感じたものから出る声というのを大切にして演じたいと思ったんです」と語っている。(※2)
彼女の中では、鉄板や定番、テンプレートといったものが存在せず、その時演じるキャラクターの目を通して観て感じたものが、そのまま声になって表現されている印象だ。演技であるにもかかわらず、どこか演技を越えた何かを感じさせてくれる。それはキャラクターの目線をどれだけ意識して、自分の演技に取り込むかということ。主観と客観のバランス感覚が、ずば抜けて絶妙だと言える。