Creepy Nutsが『よふかしのうた』を逆輸入する面白さ アニメ主題歌決定までの軌跡

 7月7日深夜よりフジテレビノイタミナ枠にて放送がスタートするTVアニメ『よふかしのうた』。放送に先立って6月9日に本PVがYouTubeにて公開されると、またたく間に話題となり、2022年6月21日現在で63万再生を突破するなど、放送前から大きな注目を集めている。

TVアニメ『よふかしのうた』本PV

 そんな本作において、オープニングテーマとエンディングテーマを担当しているのがヒップホップユニットのCreepy Nutsだ。『よふかしのうた』のタイトルや内容は彼らの同名楽曲からインスパイアを受けており、また今回はCreepy Nuts自身がオープニングテーマに新曲を書き下ろすという“逆輸入”の現象が起こっている。そこで、本稿では『よふかしのうた』がどのような変遷を経て、アニメ化へと辿り着いたのかを振り返るとともに、『よふかしのうた』とCreepy Nutsの逆輸入的な面白さを考察していきたい。

 『よふかしのうた』は、『だがしかし』でも知られているコトヤマが2019年から現在まで『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載している同名漫画が原作。これまでにコミックスは累計発行部数250万部を突破しており、その世界観は多くの漫画ファンを魅了している。

 同じ学校の女子の告白をふったことがきっかけで不登校になった中学2年生の主人公・夜守コウが、ある日、夜中に外出していると吸血鬼の七草ナズナと出会う。何も生きる目的がなかったコウは、吸血鬼に恋をした状態で自分の血を吸われると、自分も吸血鬼になれると知り、ナズナを好きになって吸血鬼を目指すという風変わりなボーイミーツガール物語だ。

 アニメ化が発表されるとその豪華な声優陣も話題となり、メインキャラクターを務める佐藤元、雨宮天だけではなく、花守ゆみり、戸松遥、喜多村英梨、伊藤静と、脇を固める声優も実力派が揃っている。

 先述したように、Creepy Nutsの楽曲に影響を受けている本作だが、元々はCreepy Nutsが『オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー』のために制作したものだった。Creepy Nutsが『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)のファンであったこと、そして日本語ラップ好きのオードリー・若林正恭もまたCreepy Nutsのファンであったことから、若林がCreepy Nutsにテーマソングを依頼して実現。若林とDJ松永は相思相愛の間柄としても知られており、昨年10月に放送された『ボクらの時代』(フジテレビ系)では対談が放送されるなど、2組の仲の良さから生まれた、いわばコラボソングと言える。

 その後、原作者のコトヤマが元々Creepy Nutsの大ファンだったことがきっかけで、2019年に同名漫画の連載がスタート。コトヤマは自身のSNSでもCreepy Nutsへの愛を爆発させており、漫画化に際して本人に許可を得た上で実現したことをTwitterで明かしていた(※1)。

 2019年にコミックス第1巻が発売された際には、Creepy Nutsの楽曲とコラボしたPVが公開されるなど、すでにこの頃から作品を通じての交流があった。

 こうした流れもあって、2021年に同作のアニメ化が決定した際には、主題歌をCreepy Nutsが務めることが発表。オープニングテーマには新たにアニメのために書き下ろした新曲「堕天」、エンディングテーマには「よふかしのうた」という、夢のようなコラボが実現した。アニメ化にあたっては多くの原作ファンが、Creepy Nutsの楽曲が主題歌を務めることを望んでいたこともあり、この発表にはファンも湧いたことだろう。

 このようにラジオからスタートし、ついにはアニメ化が決定した『よふかしのうた』。元々Creepy NutsのファンだったコトヤマがCreepy Nutsに影響を受け、そのアニメ作品の主題歌をCreepy Nutsが手掛けるという、稀に見る“逆輸入現象”が非常に興味深い。中でもエンディングテーマの「よふかしのうた」に関しては、ラジオ、ヒップホップ、漫画、アニメと様々な変遷を経て、逆輸入的に使われている面白い事例だろう。元来はラジオのために作られた楽曲なのだから当然と言えば当然なのだが、作品の設定や世界観はCreepy Nutsの楽曲に依るところも大きいため、アニメを彩る楽曲としては申し分ない。

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