『ちむどんどん』鈴木保奈美、『カムカム』YOU 朝ドラ定番の“嫁姑バトル”を振り返る

『ちむどんどん』朝ドラ定番の“嫁姑バトル”

 7月22日、恋愛ドラマの金字塔『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)の赤名リカ役をはじめ、数多くの作品で名演を見せてきた鈴木保奈美の名前がTwitterでトレンド入りを果たした。朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合)への出演が発表されたからだ。

 鈴木が演じるのは、青柳和彦(宮沢氷魚)の母・重子。「暢子の最大の敵です」と鈴木が語るように、紆余曲折を経て和彦と結ばれたヒロイン・暢子(黒島結菜)に立ちはだかる大きな壁となる。いつの時代も嫁姑の関係は複雑なもの。同じ人間を愛する者同士であるが故にぶつかりやすい。朝ドラでも幾度となく描かれてきた“嫁姑バトル”を振り返ってみよう。

 まずは、同じ沖縄が舞台となった『純と愛』(2012年後期)から。同作では、さまざまな挑戦的且つ斬新な試みがなされ、その最たるものが愛(風間俊介)の設定だ。愛は「他人の本性が見える」設定で、人の顔を怖くてまともに見ることができない。そんな愛の母・待田多恵子を演じたのが、若村麻由美である。

 優秀な弁護士だが、高圧的でいつも何かにイライラしている多恵子を怪演。同時に、他人を攻撃することしか自分自身を守れない彼女の哀しみも伝わってきた。そこに寄り添い、バラバラになった待田家の再生にも一役買ったのが、愛の妻となるヒロイン・純(夏菜)だ 。当初は弁護士ならではの方法で、純と愛の仲を引き裂こうとしていた多恵子。だが、どんなに打ちのめされても立ち上がる純を最終的には家族の一員として認めた。

 姑の心を開く方法。それは、諦めない姿を見せることなのかもしれない。『ちむどんどん』の脚本家・羽原大介が手がけた『マッサン』(2014年後期)では、泉ピン子が息子の政春(玉山鉄二)とヒロイン・エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)の結婚を認めない母・早苗役でインパクトを残した。外国人であるエリーを受け入れようとはせず、亀山家に入った彼女を女中扱い。視聴者からもエリーに対する同情の声が集まった。

 しかし、日本人として生きる覚悟を決め、愛する政春に尽くすエリーの姿に早苗の心もまた変化を見せていく。亡くなる間際にはエリーを日本一、世界一の嫁と認め、彼女から教わった英語で別れを告げた。「渡る世間に鬼はない」という粋なタイトルが付けられたこの回で一気に早苗が好きになったという人も多いのではないだろうか。

 姑ではなく小姑だが、その一年前に放送された『ごちそうさん』(2013年後期)でも、キムラ緑子演じる西門和枝のヒロイン・め以子(杏)に対する強烈な嫁いびりがお茶の間で注目を集めた。自身の再婚をきっかけに西門家を去る時には、「死ぬまで“いけず”し合う」ことを約束。遠く離れた場所から彼女が仕掛ける手の込んだ“いけず”が、むしろ視聴者をワクワクさせたものだ。

 和枝もそうだが、朝ドラの姑たちの嫁いびりは「女中扱い」が十八番なのかもしれない。『わろてんか』(2017年後期)の鈴木京香演じる北村啄子も、ヒロイン・てん(葵わかな)と息子・藤吉(松坂桃李)の結婚を認めず、てんを女中扱いする。この時、てんの母・しずを演じていたのが鈴木保奈美。娘の状況を聞き、京都から大阪の北村家に駆けつけたしずと啄子は静かだが、どちらも譲らぬ言葉の応酬を繰り広げた。微笑みを携えた迫力で“鈴木対決”に勝利した鈴木保奈美が、またもや最強の母親役で帰ってくるのが楽しみで仕方ない。

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勘当を覚悟で藤岡屋を飛び出したてん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)。駆け落ちを果たした2人は大阪の船場にたどり着いた。『わろてんか…

 嫁姑バトルといえば、『おちょやん』(2020年後期)の板谷由夏演じる夕とヒロイン・千代(杉咲花)のビンタ合戦も忘れがたい。夕は息子である一平(成田凌)と早くに生き別れていた上、この時はまだ千代と一平も結ばれてはいなかった。だが、母親の愛を求めて会いに来た一平にひどい言葉をかけた夕に千代は激怒。泣きながら張り手をくらわすと、夕からも千代に張り手が飛んできて、とんでもない修羅場と化す。一方で、それは夕の強がりであることも最後に匂わされ、切なくもあった。

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