『パンドラの果実』ライデングループの深まる闇 S2でスケールアップした濃密な物語

『パンドラの果実』S2はS1を凌駕する

 「シーズン1」の時点で地上波ドラマとしては珍しいフィルム調のルックが採用されていた本作。この映画的な空気感と攻めた描写は「シーズン2」でも的確に保たれながら、序盤で凶暴化した別所が暴れる一連など非常に生々しいゴア描写が付け加えられることで、国家が介入してくるというストーリー以上に映像的な進化を強く感じることができる。そして何といっても「シーズン2」の見どころは、新たに科学犯罪対策室に加わる吉本実憂演じる奥田玲音巡査が魅せるアクションシーンではないだろうか。

 どことなく冷めた表情で長谷部たちに向き合い、スマホでなんでも調べてしまうといういかにも“今風”なキャラクター像から一転、警察署内で凶暴化した元少年犯罪者の男相手に“特技”である武術で果敢に立ち向かう。そのキレのある動きと、その躍動を見事に捉えたカメラワークは、「シーズン1」に引き続き監督を務める羽住英一郎(今回は羽住に加え、羽住組の監督補を務めてきた長野晋也も監督としてクレジットされている)の作品を観る上で最も期待していたものである。今後もここぞという時にその“特技”がいかんなく発揮されると考えると、期待は膨らむ一方だ。もちろん小比類巻をはじめとした科学犯罪対策室メンバーとのキャラクター的なバランスも絶妙で、潜入捜査でしたコスプレを気に入った際の表情など、長谷部や三枝(佐藤隆太)らと共に作品全体のハードボイルドなテイストをほどよく中和する役割も担いそうだ。

 第3話では「シーズン1」のキーパーソンであったボディハッカージャパンのカール・カーン(安藤政信)が登場し、ライデングループとのつながりが見え隠れする。そして三枝の参加した婚活パーティで立て篭もり事件が発生し、その裏で糸を引いていた公安の手塚の過去とねらいが判明。最上の濡れ衣も晴れ、“パクス計画”をめぐるひとつの事件に区切りがつくことになるが、アンタッチャブル=捜査対象外のライデングループの闇は深まるばかりである。

 さらにカーンの口からは“新たな人類”という言葉も発せられる。はやくも折り返し地点を迎えた「シーズン2」。全6話で展開するにはあまりに濃密な物語は、スケールアップも伴って「シーズン1」をいとも容易く凌駕する作品になるだろう。

【第4話予告】『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』Season2(7月16日(土)配信スタート)

■配信情報
Huluオリジナル『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』Season2
Huluにて、毎週土曜1話ずつ独占配信中(全6話) 
出演:ディーン・フジオカ、岸井ゆきの、佐藤隆太、吉本実憂、西村和彦、本仮屋ユイカ、安藤政信、平山浩行、池内万作、弓削智久、板尾創路、石野真子、ユースケ・サンタマリア
原作:中村啓『SCIS 科学犯罪捜査班 天才科学者・最上友紀子の挑戦』(光文社文庫)
脚本:福田哲平、関久代、土井笑生
監督:羽住英一郎、長野晋也
音楽:菅野祐悟
制作:田中宏史、長澤一史
チーフプロデューサー:三上絵里子、茶ノ前香
プロデューサー:能勢荘志、尾上貴洋、古屋厚、小田切ありさ
制作協力:ロボット
制作プロダクション:日本テレビ
製作著作:HJホールディングス
(c)中村啓・光文社/HJ ホールディングス
Hulu 視聴ページ:https://www.hulu.jp/pandoras-fruit

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