『パンドラの果実』S1が出した一つの答え ディーン・フジオカが握るひとかけらの希望

『パンドラの果実』S1が出した一つの答え

 ディーン・フジオカ主演『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(日本テレビ系)が最終回を迎えた。全10話を通し、いくつもの議題を投げかけてきた本作。最後には、人類に対する大きな問いかけを残した。あまりにスケールの大きな問題であるから、導き出す答えは人それぞれだろう。けれど、答えは先延ばしにしたっていい。「かもしれない」未来を危惧するよりも、今このときを生きること、「今ある幸せ」に目を向けることが大切だと、ラストに描かれた切ない回想シーンと、穏やかな日常風景が教えてくれた。

 榊原(加藤雅也)が掲げる不老不死の理論は、きっと多くの人にとって「頭では」理解できるものだ。現に、人類が増えすぎたことによる食糧不足や環境破壊は、世界各地で起こっている。地球史上、繰り返されてきた生物の大量滅亡。それはそう遠くない未来、再び起こるのかもしれない。その前に、ウイルスによる意図的な滅亡危機を起こそうというのが榊原の企て。過去の例から、大量絶滅において生き残った生物はより強く進化する。ウイルスに強い人間だけが生き残る世界、これこそが人類の新たなステージであり、不老不死への第一歩だと榊原はいう。

 眩暈がするような、ぶっとんだ話ではない。けれど、納得して「そうだそうだ」と賛同できるものでもない。神なのか自然現象なのか、とにかくそうした領域に足を踏み入れること自体、開けてはならぬパンドラの箱だ。たとえいつかこの世が滅ぶ日が来るとしても、それが「誰かの手で意図的に」起こされたものであったならば、到底、受け入れることはできない。“危険だと分かっていてもやらなくてはならない”、それは科学者の、榊原のエゴにすぎない。

 ウイルスによる人間の選別は、いわばロシアンルーレット。榊原は、選ばれなかったわけだがウイルスは平等だといった彼なら、この結果を受け入れることだろう。しかし榊原はもともと、免疫機能が弱かったはず。ゆえに父・茂吉は、呪われた研究に没頭したのだから。ウイルスは「人間」という個体差のある生物にとって、そもそも平等な存在ではない。地位や名誉に目がくらまない、感情で動かない、ただそれだけのことだ。

 ウイルスを投与された星来(鈴木凜子)は、うなされながらパパを、そして抱かれたことのないママを呼んでいた。会えないママへの恋しさを思うと切ないが、亜美(本仮屋ユイカ)の愛は星来のなかで生きているのだと思った。そして星来は、自分が愛されて生まれてきたことを知っているのだと。

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