『ソー:ラブ&サンダー』評価のポイントはとっ散らかっている感? 喜劇と悲劇の同時上映

『ソー:ラブ&サンダー』の喜劇と悲劇

 こうしたワイティティの真面目な姿勢に応えるように、キャスト陣も素晴らしい演技を見せている。個人的MVPは、ジェーンを演じたナタリー・ポートマンだ。本作のプロット、そしてワイティティのマインドを体現する好演を見せている。弱さと強さ、悲劇と喜劇を縦横無尽に行き来して、作品を支える大黒柱になっていた。実質的な主役は彼女だといっても過言ではない。ヴィランを演じたクリスチャン・ベールは、さすがとしかいいようがない存在感だった。子どもたちを脅すシーンでは、掟破りのジョーカー演技で全力投球。DCコミック側への「オレにジョーカー役を振ってもらっても構わんですヨ」という無言の圧力すら感じる怪演だ。クリス・ヘムズワースも全身全霊で大バカ演技をやりつつ、決めるところではバッチリ決めてくれる。相変わらず無駄に豪華なカメオ出演も楽しい。そしてワイティティといえば音楽を効果的に使うことでも有名だが、今回はストレートにも程があるガンズ・アンド・ローゼズ愛が暴走している。サントラの曲の半分くらいはガンズで、何ならガンズファンのキャラが出てきた。

ソー:ラブ&サンダー

 本作は明らかにとっ散らかっている。やりすぎている。しかし、その「とっ散らかっている」感を魅力と捉えるかどうかが評価に直結するだろう。『かいけつゾロリ』ばりに全力で真面目に不真面目をやった快作である。

■公開情報
『ソー:ラブ&サンダー』
全国公開中
監督:タイカ・ワイティティ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:クリス・ヘムズワース、ナタリー・ポートマン、テッサ・トンプソン、クリスチャン・ベール、タイカ・ワイティティ、ラッセル・クロウ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題:Thor: Love and Thunder
(c)Marvel Studios 2022

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