『ベイビー・ブローカー』は“そして母になる”物語 是枝裕和が語る役者・スタッフへの感謝

是枝監督に聞く『ベイビー・ブローカー』

「生きていていいんだよ、とまっすぐ伝えることができれば」

ーーキャスト、スタッフ、そして舞台と、まぎれもない“韓国映画”ですが、日本ではなく韓国だからこそできた部分は何かありますか?

是枝:どうなんだろう。ベイビーボックスも養子縁組制度も日本以上に韓国が定着してるから、今回の題材がハマったというのはあると思いますが、映画の作り方だったり、やることは大きな違いはないと感じています。単純に撮りたい役者たちが、今回は韓国の皆さんだったというぐらいですね。

ーーメインキャスト陣はもちろんなのですが、彼らの“旅”に途中参加する少年・ヘジンが妖精のようといいますか、とても魅力的なキャラクターでした。

是枝:ヘジンを演じたイム・スンスくんはオーデションで満場一致で選んだのですが、今まで接した子役の中で一番たいへんだったんですよ(笑)。

ーー病院の中でサッカーボールを蹴り始めたり、フラフラ動いたり、劇中でも“暴れている”感じでしたが、素の状態も近いものがあると(笑)。

是枝:そうですね、素はもっと大変ですけどね。一瞬たりともじっとできなくて。そのせいもあって、大人の役者陣が彼の面倒をみながらお芝居をしなくてはいけないんですが、今回はそれが逆にいい方向にも働いていたかなと。あんなに大変な子は初めてでしたが(笑)、何気ない表情や仕草など、持っているものは素晴らしかったですね。

ーーそして、本作は「名前」もひとつの重要な要素になっています。特に終盤の名前を呼ぶとあるシーンは、神聖な儀式を観ているような感覚がありました。

是枝:そうですね。あのシーンはまさに宗教的といいますか、祝福を送るイメージで撮りたいなと。あなたはこの世に存在していい、産まれてきてよかったんだよ、生きていていいんだよ、とまっすぐ伝えることができればと思っていました。

■公開情報
『ベイビー・ブローカー』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン
製作:CJ ENM
制作:ZIP CINEMA
制作協力:分福
提供:ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.
配給:ギャガ
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