『鎌倉殿の13人』“北条家”の義時の物語が始まる 第1回と対になった第25回を読み解く
最後に頼朝と深い関わりのあった人々が各々の場所で、頼朝が倒れたことを知らせる「虫の知らせ」のような鈴の音を聞くショットが複数示される中で、手を合わせる義時のみが鈴の音を聞いていないのは、もう既に彼は虫の知らせ以上の確信を胸に抱き、「ちゃんと別れ」ていたからのように思う。そして、徹底したリアリストでもある彼は、第19回終盤で義経(菅田将暉)と別れ、命運が尽きた背中を切なげに見送る一方で、第20回では非情な謀を巡らしたように、新しい鎌倉殿と鎌倉の未来のために猛然と動き出すことだろう。
しかし、もう1つ、義時という人間を理解するうえで忘れてはならないことがある。義時に対して「お前だけに話」したのは、頼朝だけではない。序盤に命を落とした義時の兄・宗時(片岡愛之助)もまた同じだ。第5回における「板東武者の世を作り、そのてっぺんに北条が立つ。そのためには源氏の力がいる。頼朝の力がどうしても」という宗時の言葉。頼朝の右腕として鎌倉幕府を支えるとともに、宗時の思いを弟として継承し、内に秘め続けてきただろう「北条家」の義時は、「かつぐに足る人物」頼朝亡き後、どう動いていくことになるのか。
そして、屈指の癒しキャラ、全成と実衣(宮澤エマ)もまた、少しずつ変化を見せ始めている。彼らもまた、鎌倉で生きている以上、変わらずにはいられないのか。それぞれの「家」を愛する人々の野望渦巻く権力闘争が今にも起ころうとしている。
■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK