『鎌倉殿の13人』大泉洋だからこそ成立した新しい源頼朝 「佐殿!」の叫びが切なく響く

大河史に刻まされた大泉洋の頼朝

「人の命は定められたもの。あらがってどうする。甘んじて受け入れようではないか。受け入れたうえで、好きに生きる。神仏にすがっておびえて過ごすは時の無駄じゃ」

 頼朝の表情は至極穏やかだ。自分の命が天から見放されようと、それを受け入れる心づもりができていた。「鎌倉殿は昔から、私にだけ大事なことを打ち明けてくださいます」という義時の言葉を、頼朝は噛み締めるようにじっくりと聞き入った。あの瞬間、頼朝は義時と初めて出会ったときから今までを振り返っていたように思う。身内すら信じられなくなっていた頼朝だったが、その場を去る義時を見据える頼朝の目には義時への強い信頼が感じられた。

 源氏の棟梁として平家打倒を掲げ、時には冷酷な決断を下すこともあった頼朝だが、何気ない日々が最期の1日となった。帰路の途中、昔を振り返る頼朝だが呂律が回らない。手にしびれを感じ、目には恐怖の色が浮かぶが、声をあげることができない。意識が遠のき、頼朝は落馬した。政子も頼家も、頼朝を取り巻く人々も、頼朝の身に起きた異変を感じ取る。定められた命が尽きる瞬間には誰も抗えない。頼朝を少年時代から長年支え続けてきた盛長の「佐殿!」という叫び声に、胸が苦しくなった。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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