『恋マジ』は回り道の必要性を教えてくれた 柊磨の台詞に込められた私たちへのメッセージ
若いねって言われることもあれば、もう若くないねって言われることもある。27歳はそんな微妙なお年頃だ。ようやく仕事を楽しめるようになってきた人、遊び疲れて安定を求め始める人、結婚して家庭に入る人、その他さまざま。
彼らが共通して抱えているのは、「自分の生き方をそろそろ確立しなければ」という焦りなのではないだろうか。目先の欲望に負ける愚かな生き方はもう卒業したい、何かに心奪われてジタバタするのはもうやめたい。『恋なんて、本気でやってどうするの?』(カンテレ・フジテレビ系)はいわば、そんな渦中にある純(広瀬アリス)、アリサ(飯豊まりえ)、響子(西野七瀬)がもう一度プライドを捨て去り、情熱的な恋に身を投じていく物語だった。彼女たちが恋したのは“リハビリ”にしては手強い相手だったけれど、鈍化した心を動かすには必要な存在だったように思う。
効率的に心も懐も満たされると、パパ活にいそしんでいたアリサ。一足先に“本気の恋”を実らせたのは彼女だった。搾取されるより、搾取する側でいたい。だけど結局は、相手に心も身体も消費されていることに気づきながらも、強がっていたアリサの前に現れた克巳(岡山天音)。お金があるわけじゃない。そこまで顔もタイプじゃないのに、一緒にいると穏やかな気持ちになれる克巳に心から愛されて、アリサは初めて自分のことを大切にすることができたのだ。
最終話では、アリサに続いて響子の恋も完結を迎えた。どこか危うい道を行くアグレッシブなアリサとは対照的に、安定志向で誰から見ても幸せそうな家庭を手に入れたはずの響子。だけど彼女もまた、自分を卑下しているところがあったのかもしれない。“自分は養われている”という後ろめたさから、夫から雑に扱われることに耐え忍んできた響子。しかし、詐欺の前科がある要(藤木直人)に出会って彼女は変わった。
過去は変えられないし、誰かを傷つけた罪悪感も、もちろんある。それでも生きがいを求めることを諦めず、己の道を切り開いてきた要に“尊敬”にも似た恋心を抱いた響子は、夫に離婚届を突きつけた。そして、要の弟子となり、フランス料理のシェフを目指すことを決意。「私はもう大人だから自分の行く道は自分で決める」。本気の恋を通して響子が手に入れたのは、自分の人生に責任を持つ覚悟だった。