『恋マジ』は回り道の必要性を教えてくれた 柊磨の台詞に込められた私たちへのメッセージ

『恋マジ』が教えてくれた回り道の必要性

 一方、最後まで「恋なんて人生のムダ!」という自分の価値観に囚われ続けたのが、本作の主人公である純だったのではないだろうか。柊磨(松村北斗)との出会いをきっかけに一度は恋の喜びを覚えた純だったが、3人の中で最も傷つくことに敏感だった。

恋なんて、本気でやってどうするの?

 それは幼い頃から恋愛体質な母親に振り回されてきたからであり、“みっともない自分”と向き合いたくなかったからでもある。結果、彼女は一緒にいて心に波風が立たない大津(戸塚純貴)を選んだ。でも、そんな大津が教えてくれたのは自分の心に素直になることの大切さだった。第4話で母親への嫌悪感をあらわにした純に、大津が放った「純はお母さんの泣いとるとこばっか見よったかもしれんけど。ほら、好きな人と笑いよったこともあるんやないと?」という言葉が記憶に残っている。彼の言う通り、最終的に傷ついてボロボロになったとしても、幸せだった時間までなかったことになるわけじゃない。

恋なんて、本気でやってどうするの?

 大津と別れ、柊磨ともう一度向き合う決心をした純は彼を公園へ連れて行く。そこで人目もはばからず、募る思いを伝え合う二人。「純がいなくてめちゃくちゃ苦しかった。夜も眠れないし、料理の味も分かんない。もう二度とごめんだと思った」。その言葉とは裏腹に柊磨の顔は今までで一番晴れやかで、幸せそうだった。

 きっと他人からすれば、純と柊磨が結ばれるラストシーンは「みっともないな」って、ちょっと笑っちゃうようなものだったかもしれない。多分、本作のタイトル「恋なんて、本気でやってどうするの?」は令和のこの時代に多くの人が感じていることだった。

恋なんて、本気でやってどうするの?

 何でもかんでも効率重視で、つい恋愛にまで安定を求めてしまいがちな今。真正面から王道のラブストーリーを届けてきた本作が教えてくれたのは、回り道の必要性だったように思う。本作には恋愛に限らず、誰かを傷つけたり傷ついたり、人生で間違った選択をしてしまった人たちばかりが登場してきたが、彼らはみんな最後に何度でも人生はやり直せることを証明してくれた。「いっぱいヒビが入って傷ついても、また何度でも直せばいい」という柊磨の台詞は、間違いや傷つくことを恐れ過ぎる現代の私たちに対するメッセージだったのではないだろうか。

■配信情報
『恋なんて、本気でやってどうするの?』
FOD、U-NEXT、カンテレドーガ、Tverにて配信中
出演:広瀬アリス、松村北斗、西野七瀬、飯豊まりえ、岡山天音、小野花梨、安藤ニコ、長田成哉、牧野莉佳、三浦りょう太、戸塚純貴、味方良介、アキラ100%、古川雄大、香椎由宇、斉藤由貴、藤木直人ほか
脚本:浅野妙子
演出:宮脇亮、北川瞳
音楽:吉俣良
主題歌:あいみょん「初恋が泣いている」(unBORDE/Warner Music Japan)
挿入歌:SixTONES「わたし」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
プロデュース:米田孝、高石明彦(※「高」はハシゴダカが正式表記)
制作協力:ジ・アイコン
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/koimaji/

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