『ちむどんどん』最大のキーパーソンは原田美枝子? ヒロイン・暢子に影響を与える存在に

原田美枝子、『ちむどんどん』で重要人物に

 “東京編”が盛り上がりを見せる朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合)。いま最大のキーパーソンとなっているのは、ヒロイン・暢子(黒島結菜)が働くイタリアンレストラン「アッラ・フォンターナ」のオーナー、大城房子(原田美枝子)なのではないだろうか。彼女の存在が物語に起伏を生み出すきっかけを作り、作品全体を引き締めている印象があるのだ。

 朝ドラ作品には必ず、ヒロインに対して大きな試練を与える存在が登場するものだ。前作『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)でいえば、1人目のヒロイン・安子(上白石萌音)には嫁ぎ先の雉真家の姑である美都里(YOU)などがこれにあたり、2人目のヒロイン・るい(深津絵里)にはのちに親友的存在となる“ベリー”こと野田一子(市川実日子)が、3人目のヒロイン・ひなた(川栄李奈)にはやがて恋仲となる五十嵐文四郎(本郷奏多)がいた。もちろん、彼女らの前に立ちはだかるのはこの者たちだけではないし、それぞれのヒロインが生きる時代や社会が生む試練というものもある。しかしこの者たちがヒロインとの関わり合いによって生み出していたものは、それがそのまま視聴者にとっての作品の手触りになっていただろう。『ちむどんどん』でも暢子が超えるべきハードルはいくつもあるが、現状もっとも大きなものが大城房子の存在だろう。

 房子は横浜で生まれた沖縄2世。戦後の闇市をたくましく生き抜き、イタリアへと渡って料理の腕を磨き、東京・銀座にて自身の店である「アッラ・フォンターナ」を開いた。いや、“店”というより彼女の“城”だと言えるかもしれない。時代が時代だというのもあるが、房子はこの店において絶対的な存在だ。“お客様ファースト”な考えの持ち主ではあるものの、部下である従業員には厳しく容赦ない。特に暢子に対しては、ことあるごとに「クビ」との宣告。この言葉とともに、精神的にも未熟な暢子に次々と試練を与えている。

 そんな房子を演じているのは原田美枝子。『悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜』(日本テレビ系)や大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)に出演の石橋静河の母であり、いまでは日本が誇る名優の一人に数えられる存在だ。当然かつては黒島のように若手時代があり、のちに名作と呼ばれる数々の作品で力をつけてきた。増村保造監督作『大地の子守歌』(1976年)や長谷川和彦監督による『青春の殺人者』(1976年)、神代辰巳監督が手がけた『もどり川』(1983年)など、彼女が出演した映画作品だけでも名作を数え出したらキリがない。さまざまな監督のもとで多種多様なジャンルの作品に挑み続け、手練れの俳優たちと組み合ってきたことで得られた技術ももちろんあるはずだが、場数を踏むことでしか得られない貫禄というものもあるだろう。彼女が朝のお茶の間に登場すると、暢子だけでなく自然とこちらまで姿勢を正してしまうもの。彼女の存在はレストラン内どころか、画面の外側にも影響を与えているのである(そんな房子に果敢に挑みかかっていく暢子のメンタルが羨ましい……)。思い返すと、朝ドラ『半分、青い。』では石橋静河の演じた役どころが、ヒロインにとってハードルとなるものでもあった。

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