『かぐや様』石上優はなぜ主人公を凌ぐ人気を得たのか 『パリピ孔明』との共通点から紐解く

 現在放送中の『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』。両想いでありながらプライドが邪魔し、告白の駆け引きをしている主人公2人の恋愛模様が進展をみせようとしている。そんな中、石上優もまた意中の相手の子安つばめとの関係を前に進めるため、文化祭を機に動き出すことを決意する。

『かぐや様は告らせたい』

 石上は、実は主人公の2人を凌ぐほどの人気を獲得している魅力あふれるキャラで、SNS上でも「石上推しです!」「石上にガチ恋こじらせている」等の投稿が多く見られるほど。生粋の根暗キャラとして知られる石上優が、なぜここまでの人気を得ているのだろうか。

 まずファンを魅了するのは、根暗な性格や見た目に反して、有能で熱い男というギャップを持つ点だ。

 石上は、個性的な生徒会の中でもっとも仄暗く凄惨な経験をしているメンバーで、中等部時代にストーカー疑惑をかけられ、停学処分となり引きこもっていた過去がある。引きこもりからの復帰後も同学年の女子全員から白い目で見られ、誹謗中傷を受け続けてアイデンティティを失っている状態だった。

 そんな石上だが、データ処理のエキスパートという顔を持ち、その実力は生徒会長の白銀御行に「お前が抜けたら生徒会は破綻する」といわしめるほどだ。

 さらに、見た目に反した熱い正義感の持ち主でもある。中等部時代の事件もその熱すぎる正義感ゆえに生じた誤解である。ストーカー疑惑の真相は、当時から周りとの距離の測り方が分からず、孤立していた石上に唯一優しくしてくれた大友という女子生徒を、善人の顔をした悪漢の彼氏から守るためだった。このエピソードで、根暗な外見に反して内面イケメンというギャップを魅せた。

 さらに、共感を得やすく応援したくなるキャラクター像が、人気を押し上げたもう1つの要因だ。

 中等部時代の暴力事件で停学処分を受け、そのまま引きこもってしまった石上。しかし、伊井野ミコの先生への抗議、生徒会の先輩3人の尽力により石上は救い出される。

 学校生活に復帰した石上は体育祭を機に自分を変えようと応援団に参加する。彼は、中等部時代の事件以前から周りとの距離の測り方、人との接し方に難があると自覚していた。原因は人を信用していないこと、それは石上から見た応援団の面々の目が描かれていない点にも表れている。

 石上は、応援団の活動を通じて過去の失敗に囚われず前向きになってもいいかも、と自信を手に入れようとしていた。そんな矢先、他校へ転校していた事件当事者の大友が目の前に現れ、状況は一変。「なにを浮かれているんだ」と再度過去に囚われだす石上だったが、怪我をした団長の代理でリレーのアンカーを務めることに。

 茫然自失の石上の背中を押してくれたのは、引きこもりから救い出してくれた会長白銀。「周りの視線など気にするな!」と激励され、石上は自分を取り戻す。

 「自分はおかしくない」自分の正しさを証明するため、自分を肯定するために全力で走りきる。石上は惜敗してしまうが、かけよった応援団の面々が泣いたり励ましてくれる表情が見えるようになる。自分が見ようとしていなかっただけで、ちゃんと見ることで風景は変わる。石上が、人と向き合うことを学び、周りに支えられていることを知り、成長することができた瞬間だった。

 この体育祭編は、石上を主人公とした成長物語であり、その姿に多くの人が共感したことだろう。現代の多くの人が抱えていると思われる「自信のなさ」と「殻を破りたい」という願望を石上が体現してみせたのだ。

 石上は本作の登場人物の中で、ある種リアリティに溢れたキャラクターのため、視聴者が自分と重ね合わせやすく、共感を呼び、応援したくなる。だからこそファンからこれほどまで愛されているのだろう。

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