柄本佑×鈴木杏が『空白を満たしなさい』の見どころを語る 「家族の愛を再確認していく」

『空白を満たしなさい』柄本×鈴木が語る

 6月25日からNHK総合で放送がスタートするドラマ『空白を満たしなさい』のキャスト・スタッフよりコメントが寄せられた。

 本作は、作家・平野啓一郎が東日本大震災直後に発表した同名小説を映像化したヒューマンサスペンス。ある日突然、身に覚えのない己の死から復活した男が、最愛の妻と幼い息子を残して、なぜ自分は死なねばならなかったのか、答えを探していく。

 主人公・土屋徹生を柄本佑、徹生の妻・千佳を鈴木杏、生前、何かにつけて徹生につきまとっていた謎の男・佐伯を阿部サダヲが演じるほか、萩原聖人、渡辺いっけい、うじきつよし、藤森慎吾、ブレーク・クロフォード、風吹ジュンらがキャストに名を連ねた。

 脚本は、映画『そこのみにて光輝く』、『まともじゃないのは君も一緒』、『ボクたちはみんな大人になれなかった』などの高田亮が手掛けている。

 柄本は本作の見どころについて、「自分はなぜ死んだのか? 誰かに殺されたのではないかと疑いながら、自分の死の真相を自分で明らかにしていくという、あまり今までにないミステリーの要素がありつつ、ある犯人像が出てきた時に、その犯人を追いかけるというサスペンスの要素がふんだんに盛り込まれています」とこれまでにないジャンルの作品であることを明かす。鈴木は、「徹生さんの視点、千佳の視点、佐伯の視点……どの人物の視点でこのドラマを見るかで、感じ方が全然違うと思います」と複数の視点が本作の魅力であることを明かした。

柄本佑(土屋徹生役)コメント全文

演じた「徹生」の印象について

父親を1歳の時に亡くしているのですが、どこか父親へのあこがれや、家族というものへの強い想いがあったのだと思います。自分が知ることのなかった父親の影を背負い、家族、息子に対して頭の中にいる父親像みたいなものを何とか体現し、幸せというものをつかみ取ろうとしている、非常にまっすぐでまっとうな人間……そんな印象があります。

ドラマのように、自分の愛する人が生き返ったら

本当にそこに存在するかどうか確認しますよね。でも立っていられないだろうな。たぶん後ずさりして転ぶと思います。それこそドラマの中でもありますが、呼吸がおかしくなるでしょうね。すぐ触れられるかというと、それは定かではないですね。亡くなったと思った人が急に帰ってきたら、気絶するかもしれません。そのくらい衝撃があると思います。うれしいと言うのは、もうちょっと先だと思います。触る、ぬくもりを感じるというのも、もう少し後です。驚愕するという言葉では足りないくらい驚くと思います。

撮影中で印象に残っていること

台本を読んだ時、阿部さん演じる佐伯とのシーン過激だなと思い、鈴木さん演じる千佳とのシーン過酷だなと思いましたが、始まると想像以上に……。そんな中印象的な事はスタッフの方々の気遣いと優しさです。本当に仲間に恵まれた現場でした。

ドラマの見どころについて

復生して(死から甦って)きて、自分の死因がわからない。自分はなぜ死んだのか? 誰かに殺されたのではないかと疑いながら、自分の死の真相を自分で明らかにしていくという、あまり今までにないミステリーの要素がありつつ、ある犯人像が出てきた時に、その犯人を追いかけるというサスペンスの要素がふんだんに盛り込まれています。でも一番コアの部分は、家族の愛を再確認していくという事だと思います。どうやって千佳(鈴木杏)や息子の璃久(斉藤拓弥)は、3年いなかった夫・父を受け入れていくのか。徹生は3年という自分がいなかった時間をどう受け入れ、新たな一歩を踏み出せる状態までいけるのか。そこが最大の見どころになってくると思います。

鈴木杏(土屋千佳役)コメント全文

演じた「千佳」の印象について

千佳は決して強くはないけれど、強くあろうと思っているし、周りに強くさせられてしまった所もある人。徹生さん(柄本佑)のいなかった3年間で得た強さと、徹生さんが戻ってきてから、また違う強さも芽生えていくのですが、本当は誰かに支えてもらわないと立っていられないような人なんだと思います。けれど、それをなかなか「よし」とされない人生なのかと。
温かい家庭を作ろうと、できることはできるだけ完璧に近い形でやってきた人です。もちろん徹生さんがいなくなった後も、息子の璃久に対しては理想のお母さんとして、徹生さんのような明るい存在でいようとしたのだと思います。

ドラマのように、自分の愛する人が生き返ったら

私はやっぱり抱きしめたいって思います。まず抱きしめて、そこから話を聞いたり話をしたりするのだと思いますが、まずは触れたいです。

撮影中で印象に残っていること

柄本佑さんとがっつりお芝居できたことがうれしかったです。シリアスなシーンが続いても、休憩中はとても朗らかで、現場全体を大きく支えていて、愛される役者さんってこういう人のことを言うんだなぁと感動しました。

ドラマの見どころについて

ドラマは「これはどういうことなのだろう」という謎に満ちたところから始まるので、それがだんだん分かっていくところの面白さがあると思います。また、徹生さんの視点、千佳の視点、佐伯(阿部サダヲ)の視点……どの人物の視点でこのドラマを見るかで、感じ方が全然違うと思います。自分が出ていないシーンも結構多いので、出来上がった作品を見た時にどういう風に感じるのか、すごく楽しみです。

平野啓一郎(原作者)コメント

ドラマ化されることについて

10年以上前に刊行した作品ですが、その後も継続的に読まれ続けていて、多くの読者が、自らの存在の深い場所でこの物語を受け止めてくれています。それは、小説家としての何よりの幸福です。ドラマ化の決定は、思いがけない喜びで、素晴らしい俳優の皆さんと製作スタッフに恵まれ、期待に胸を膨らませています。ドラマを通じて、一人でも多くの方に、本作が届くことを願っています。

ドラマのように、自分の愛する人が生き返ったら

とにかく、話がしたいですね。人間が生き返る、というのは、突飛な設定ですが、愛する人が亡くなった時、遺された人たちが最も強く願うことはと考えると、やはり「もう一度会いたい、会って話がしたい」ということに尽きると思います。単純ですし、絶対に叶わないことですが、しかし、これに勝る思いはないでしょう。言葉が、そこではたとえようもなく重要であり、自分の存在のすべてを何とか表現しようとすると思います。だからこそ、文学の主題になります。

視聴者へメッセージ

生きることには、喜びと悲しみとが両方備わっていて、その間には陰影に富んだグラデーションがあります。私自身は、生の孤独が極まってゆくような感覚の中で、何度となく文学作品に救われてきました。敢えて言えば、文学はそうした精神的な糧を求めている人たちにとっては、立派に「役に立つ」ものです。そしてそれは、私たちの感じている孤独が、決して孤独なものではなく、他者と共有可能なものであることを教えてくれます。これは、生きることの希望を取り戻すための物語です。

■放送情報
『空白を満たしなさい』【全5回】
NHK総合にて、6月25日(土)スタート 毎週土曜22:00〜22:49放送
出演:柄本佑、鈴木杏、萩原聖人、渡辺いっけい、うじきつよし、藤森慎吾、ブレーク・クロフォード、風吹ジュン、阿部サダヲほか
原作: 平野啓一郎『空白を満たしなさい』
脚本:高田亮
音楽:清水靖晃
制作統括:勝田夏子(NHKエンタープライズ)、落合将(NHK)
演出:柴田岳志(NHKエンタープライズ)、黛りんたろう
写真提供=NHK

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