“4秒”の猪を映すために大奮闘 『100カメ』で明かされる『鎌倉殿の13人』の撮影裏

『100カメ』撮影裏を聞く

 6月14日放送の『100カメ』(NHK総合)では、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)の現場に潜入した様子がオンエアとなる。

 『100カメ』は、気になる場所に100台の固定カメラを設置して人々の生態を観察するドキュメンタリー番組。『週刊少年ジャンプ』編集部に密着した2018年9月の初回を皮切りに、2021年まで3年間は不定期の特集番組としてオンエアされ、2022年4月からはレギュラー番組となった。

 今回、番組が潜入したのは6月12日に放送されたばかりの『鎌倉殿の13人』第23回「狩りと獲物」で描かれた「富士の巻狩り」の大規模ロケ。富士の巻狩りとは、源頼朝(大泉洋)が嫡男・万寿(金子大地)の披露目の場とするため、御家人を集めて富士の裾野で行った、いわゆる権力を誇示する壮大な軍事演習である。

 『鎌倉殿の13人』では静岡県裾野市にある富士山の麓の原野に、10日間をかけて頼朝の陣のセットを建て込む。北条義時を演じる主演の小栗旬や頼朝役の大泉洋といったキャスト陣だけでなく、番組スタッフ、エキストラ合計200人以上が現場に集結。本番2日間、予備日1日で100カットを撮りきる予定だったが、天気は3月としては季節外れの雨から雪へ。初日は撮影中止、ロケ2日目は早朝から雪かきをするも間に合わず、大規模なシーンは予備日へと移されたが、ラストには嵐が襲来し陣が崩壊するといった、予測不能のドキュメンタリー内容となっている。きっと『100カメ』を視聴した後には、もう一度『鎌倉殿の13人』第23回を観直したくなることだろう。

 『100カメ』放送を前に、マスコミ向けに取材会が行われた。参加したのは『100カメ』の大木莉衣ディレクターと桜井和紀プロデューサー、『鎌倉殿の13人』の清水拓哉チーフプロデューサー。企画は「NHKの現場の中を覗き見たい」という桜井の思いに、清水が応えたことから実現の運びとなった。ただ、話が持ち上がったのは『鎌倉殿の13人』が主にスタジオ収録をしている期間。基本的にNGは起こらず、ノーミスかつトラブルなく進行していくことが通常であるため、清水は「密着してくれるのは嬉しいですし、僕らの仕事を客観的に見てみたいという思いもあったので、何かうまいことできないかなと思っていた」という。そんな折に予定されていた巻狩りロケ。スタジオに比べれば想定外の事態は起こりやすいということで、『100カメ』としても挑戦的な野外ロケに潜入することとなった。

 結果的にロケは清水でもなかなか経験したことのないレベルの荒天に。「『100カメ』としてはホクホクで帰ってきたようなんですけど、僕らとしてはヒヤヒヤだった」という清水に、桜井は「雪になった時は正直興奮しましたけれども(笑)」と本心を明かしつつ、「大河本編のスケジュールが成立しないと我々の番組も成立しないので同じようにドキドキしていました」とスリリングだった3日間を振り返る。

 カメラは巻狩りロケだけでなく、そこに向けた準備段階でのスタッフルームや技術打ち合わせなどにも密着している。その総時間はおよそ1000時間(多い時であれば1800時間を超えることもあるという)。大量の撮影素材を場合によっては早送りをしたり、2台を同時に視聴できるようにしたりと工夫をしながら確認し、放送尺の30分(MCパートもあるので実際はそれ以下)にまとめていく。大木にとって今回の『鎌倉殿の13人』が『100カメ』として初めての現場となった。もともとドラマのファンだったこともあり、素材を長時間見ていることは苦痛ではなかったが、いわゆる撮れ高を見逃してしまうことへの怖さがあったという。

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