『マイファミリー』は家族の可能性に希望を託した 富澤たけし演じる吉乃が引き起こした悲劇

家族の可能性に希望託した『マイファミリー』

マイファミリー

 吉乃の口から語られた真実は悲劇としか言いようがない。善意から生じた過ちがわずかな不運とボタンのかけ違いによって取り返しのつかない不幸に転じていく。あの時、心春が亜希の密会を目撃していなければ。あの時、心春が階段から落ちていなかったら。吉乃のしたことが許されないことであるのはもちろんだが、そもそもの動機は「家族にバレるのが怖かった」から。劇中では、吉乃による「気持ちのいいもんじゃねえな。家族を疑うってのは」「家族が壊れるのは何よりもつらいこと」という発言もあった。情に厚い吉乃が、家族を思うあまり他人の家族を壊してしまったのなら、あまりにも救いがなさすぎる。

マイファミリー

 一度他人という川を渡って家族になると、愛情だけでなく悲しみや憎悪も背負っていくことになる。東堂と亜希は心春を失った痛みによってつながっていて、三輪と沙月(蓮佛美沙子)は優月(山崎莉里那)のために家族の可能性を模索する。喪失や解体が避けられないとしても、それだけではなく、家族は新たに作り上げていくことができるものであり、鳴沢家の第二子出産は家族という共同体が持つポジティブな側面を示していた。そのことは血のつながった家族に限られず、香菜子(高橋メアリージュン)にとっての「ハルカナ・オンライン・ゲームズ」や、息子たちを心配する麻由美(神野三鈴)と牧村(大友康平)の関係も広い意味の家族に含まれる。

マイファミリー

 親が子を思うように、子は親を案じる。二転三転する本作を通じて、誰もが自分にとっての家族の存在を意識したことだろう。そもそも、この広い世界で家族になれたことそれ自体がある種の奇跡だ。“ノンストップファミリーエンターテインメント”を標榜する『マイファミリー』は、当たり前のようで私たちが見過ごしている真実に光を当てることで、家族の持つ可能性に希望を託した。

■配信情報
日曜劇場『マイファミリー』
Paraviにて配信中
出演:二宮和也、多部未華子、賀来賢人、高橋メアリージュン、大友康平、神野三鈴、迫田孝也、那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)、山田キヌヲ、 渡辺邦斗、藤間爽子、大島美優、松本幸四郎、富澤たけし(サンドウィッチマン)、濱田岳、玉木宏
脚本:黒岩勉
演出:平野俊一
プロデューサー:飯田和孝、渡辺良介(大映テレビ)
スーパーバイジングプロデューサー:那須田淳
協力プロデューサー:大形美佑葵
音楽:大間々昂
主題歌:Uru「それを愛と呼ぶなら」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作著作:TBS
(c)TBS

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