『俺かわ』は最後まで愛おしいドラマだった 29歳の山田涼介が演じたからこそのリアル感
私たちには、過去を変える力はないと思っていた。過去に対する後悔は、胸に抱いたまま生きていくしかないのだと。だが、『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』(テレビ朝日系/以下『俺かわ』)を通して、新たな価値観を持つことができた。“今”の自分を愛することができれば、自ずと過去も色づいていく。和泉(芳根京子)が、「消したいと思っていた過去が、今はあってよかったのかもなって……」とかつての自分を許してあげられたように。
6月11日に最終回を迎えた『俺かわ』は、最後まで愛おしいドラマだった。康介(山田涼介)と和泉の遅すぎる初恋を、時にはドキドキ、時にはハラハラしながら見守った3カ月間。物語が進むにつれ、康介の可愛い以外の魅力も、たくさん見つけることができた。まっすぐに和泉と向き合う姿や、真摯に仕事に取り組んでいるところ。一ノ瀬(大橋和也)に幾度となく迷惑をかけられても、つい手を差し伸べてあげる優しさ。私たちは、全9話を通して何度も彼に恋をした。可愛いしか魅力がないと落ち込む康介に、「ほかにも、たくさんあるよ!」と教えてあげたくなったのは、筆者だけではないはずだ。
山田涼介が29歳のいま、『俺かわ』に挑んだのにも意味があったように思う。本作は、可愛いを武器に受け身の人生を送ってきた康介が、30歳を目前に“可愛いの消費期限”を知るところから始まる物語。14歳でCDデビューし、アイドルというシビアな世界に身を置いてきた山田は、「若いね」「可愛いね」で許される時代が終わることへの葛藤を、康介以上に感じてきたはずだ。その葛藤を乗り越えたから、輝く“今”があるのだろう。そんな山田が同い年の康介を演じたからこそ、より作品をリアルに感じることができた。
最終話では、和泉の過去にスポットが当たった。自分のわがままで、家族の居場所を奪ってしまったことを後悔している和泉。そんな彼女に、康介は新たな“居場所”を作ってあげた。それも、押し付けるのではなく、和泉が必要な存在であることをさり気なく伝える。些細なところまで、康介の気遣いが光っていた。「居場所は、自分の手で作るもの」。過去の傷を昇華した和泉は、夢を叶えるために渡米を決める。康介が作ってくれた“居場所”があるから、新たな場所に行く決意ができたのだろう。