『ちむどんどん』房子の若い頃のドラマをもっと観たい 桜井ユキの瞳にみなぎる“意志”

『ちむどんどん』もっと観たい桜井ユキの物語

 『ちむどんどん』(NHK総合)第9週では、銀座のレストラン「アッラ・フォンターナ」のオーナーを務める房子(原田美枝子)のことが次々と明らかになった。

 まず、房子と暢子(黒島結菜)は親戚だった。房子は暢子の父・賢三(大森南朋)のおばにあたるのだという。それを知った暢子は、実際のところはどうかわからないが、今まで房子が自分に厳しかった理由が“親心”だったと感激し、房子から命じられたおでん屋の立て直しへ奮起していた。そのおでん屋も房子に深い関わりがあった。かつて、房子と暢子が「ペペロンチーノ対決」をした際、房子は和食や中華、洋食などさまざまなジャンルの料理をしたのち、イタリアで修行したことが明らかになっていたが、料理人としての始まりは屋台のおでん屋だったのだ。まさに暢子が立て直そうとしているおでん屋の店主・安孫子ヨシ(大島蓉子)は房子の料理に救われた一人。食べるものがなく、闇市を彷徨っていたヨシとその息子に、何も言わずおでんを差し出したのが房子だったのだという。

 そのおでん屋をやっていた若き日の房子を演じていたのが桜井ユキだ。朝ドラでは、時代の変化とともに登場人物を演じる人が変わることがあるが、人が変わってもどこか似ている点がある。たとえば『ちむどんどん』では、物語が進んだ今も、たまに回想シーンとして、幼少期の比嘉家四兄妹が出てくるが、その風貌や立ち振る舞いは現在とそっくりだ。ヨシとその息子に突き出すようにおでんを出した若き日の房子は、凛とした表情だったが、親子を見つめる眼差しには優しさが滲み出ていた。時を経て、屋台のおでんを食べてもらったあと、教えられたことを懸命にメモする暢子を見つめる房子も同じような顔をした。ここで微笑みが出るのが、今の房子の年の功を感じさせる。桜井と原田はふたりで房子という人物を見事に演じていた。

 桜井は朝ドラ初出演。舞台演出家の石丸さち子が主宰する「俳優私塾POLYPHONIC」に通い、本格的に演技を学ぶと、映画やドラマを中心に活躍。2019年には、連続ドラマ初主演を務めたNHKよるドラ『だから私は推しました』をはじめ、全クールのテレビドラマにレギュラー出演を果たし、話題となった。

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