『ちむどんどん』竜星涼が歩む“国民的ニーニー”への道 憎まれ役は未来の愛されキャラ?

『ちむどんどん』“国民的ニーニー”への道

 沖縄と東京を舞台とする『ちむどんどん』(NHK総合)で「山原の一番星」ならぬ「山原一のトラブルメーカー」の座に君臨しているのが主人公・比嘉暢子(黒島結菜)の兄である賢秀(竜星涼)だ。

 四兄妹の長男である賢秀は、その持ち前の明るさで周囲を勇気づける存在だった。少年時代の賢秀(浅川大治)は母の優子(仲間由紀恵)が買ってくれた運動靴と良子(土屋希乃)の体操服を豚のアベベに汚されてしまうが、運動会では裸足で一等賞を獲り喝采を浴びる。しかし父の賢三(大森南朋)が死去すると、一家の困窮と軌を一にするように天性の陽気さは影を潜め、大人になった頃にはちょっとしたワケありの不良になっていた。

 賢秀が行くところトラブルの予感が漂う。まさに嵐を呼ぶ男と言ってよいが、貧しい中で懸命に生きる妹たちや周りの人からすれば迷惑なだけで、画面の向こうの視聴者からも顰蹙を買っているのだから尋常ではない。眞境名商事社長の息子を殴って結果的に暢子の就職を破談にし、沖縄返還のどさくさに紛れて我那覇(田久保宗稔)に一家のなけなしの金銭をだまし取られたあげく、ハンバーガー屋で暴れて郷里を後にする。上京してからもボクシングジムの会長から金を借りて逃げ、再会を喜ぶ暢子の所持金をくすねる。その他にも良子(川口春奈)の結婚話に付け込んで喜納金吾(渡辺大知)の父・銀蔵(不破万作)に手切れ金を要求し、養豚場で世話になった猪野(中原丈雄)に金を前借りして消えるなどエピソードには事欠かない。6月6日から放送の第9週では詐欺まがいの商法に手を出しており、小悪党ぶりは加速する一方である。

 視聴者の憎しみを一身に集める賢秀は本作のヒールであり、妹たちがけなげに頑張るほど賢秀の至らなさが際立つ仕掛けになっている。ドラマに不可欠な要素を担っているとはいえ、放送開始当初はこれほどの憎まれ役になると思わなかっただけに、逆にどうしようもない賢秀の行く末が気になってしまうのだ。『ちむどんどん』の世界をかき回す賢秀について、竜星は自分に似たネアカなキャラクターと評しつつ、「国民的ニーニー」を目指すと公言している。ドラマ本編を観る限り、現時点では限りなく期待薄と思われるが、可能性があるとすれば竜星が持つポテンシャルに求めることができるだろう。

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