『ちむどんどん』を観て感じるコメディの難しさ 朝ドラだからできること/できないこと

『ちむどんどん』に感じるコメディの難しさ

  今度はおでん屋台で修業。“朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第9週「てびち!てびち!てびち!!」では、比嘉暢子(黒島結菜)は大城房子(原田美枝子)から鶴見のおでん屋台の立て直しを任される。

 半ば、料理のセンスがあるものだから自分なりのアイデアを入れすぎて元祖の味を逸脱してしまう暢子が料理の基本に立ち返る。最初は野性味を帯びていた暢子にだんだんと知性が備わっていく様子は見ていて気持ちがいい。厳しい房子もじょじょに表情が柔らかくなる度合いが増している。彼女はじつは、幼少期の暢子を引き取ろうとした大叔母であった。

『ちむどんどん』45話

 暢子は安心、だがニーニーこと賢秀(竜星涼)は相変わらずである。960ドルを持ち逃げした我那覇(田久保宗稔)に東京(鶴見?)で再会し、あやしい健康食品・紅茶豆腐のビジネスをはじめる。「副社長」という名前に喜んで、またしても15万円を騙しとられる。そのお金の出どころは優子(仲間由紀恵)。この展開に「あきさみよー」と叫びたい。だが、以前ほどの苛立ち度合いは減ってきた気がする。お金に困っているようで実は困ってないのではないかとか真面目に考えることなく、ようやくネタとして笑って見ることができるようになってきた視聴者は筆者だけではないはずだ。慣れとは偉大である。

 最初から今度の朝ドラは「ややコントよりのコメディです」と宣言してくれていたらその構えで観ることができたと思う。公式サイトに書かれた紹介文と実際に放送されている出来事との距離を埋めるまでに時間がかかってしまった。

2022年は、沖縄本土復帰50年。
復帰以来、多くの沖縄の若者たちが、本土へと仕事や夢を追いかけて渡っていった。
家族と別れ、食べ慣れた郷土の料理を思い──。
コロナ禍に見舞われ、かつてなく“孤独・孤立”が問われる今の時代にこそ
遠く離れ、会えなくても、心はつながって支えあう
美しい家族と、ふるさとの物語を全国にお届けします。
羽原大介さんの脚本によるオリジナル作品です。
(『ちむどんどん』公式サイトより※)

 この文章だと、従来のしっとりしたご当地ホームドラマ的朝ドラなのかなと思ってしまう。羽原大介の代表作が朝ドラ『マッサン』、NHKドラマ10『昭和元禄落語心中』、映画『フラガール』、などでヒューマン・ドラマの印象があったから、『ちむどんどん』もその延長線上にあると思っていた。アニメ『プリキュア』シリーズという異色な作品もあるが、それもコメディという印象ではない。

 羽原大介が描く男性はたいてい、本音を隠す意地っ張りである。そこに漂う哀愁が沁みる。日本酒とおでんみたいな口当たりなのである。ところが今回は、なんかちょっと違う。暢子の作った料理のように、違った味がする。

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