『ちむどんどん』竜星涼が歩む“国民的ニーニー”への道 憎まれ役は未来の愛されキャラ?

『ちむどんどん』“国民的ニーニー”への道

 俳優として10年以上のキャリアを持つ竜星が注目されたのは『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日系)だった。若手俳優の登竜門となった特撮戦隊もので主人公の桐生ダイゴを演じた竜星は、王道の熱血ヒーローにぴったりだった。その後、学園ものや刑事役で出演を重ね、『ひよっこ』(NHK総合)の巡査・綿引役で広く認知されたが、固定観念にとらわれない役柄にも意欲的にチャレンジしてきた。『オトナ高校』(テレビ朝日系)のスナック店主で毒舌のシングルファーザー教師、『アンナチュラル』(TBS系)ではUDIラボに協力する謎めいた葬儀屋、『同期のサクラ』(日本テレビ系)の菊夫は応援団出身の熱血漢など多彩なレパートリーを誇る。

 男性特有の弱さや情けなさを表現できるのが竜星の持ち味で、『昭和元禄落語心中』(NHK総合)ではムショ帰りの与太郎、のちの三代目有楽亭助六として芸の習熟と内面の成長をリンクさせ、落語の世界を生ききった。相反するキャラクターを同居させる竜星は、定型を守りながらその境界を広げていける役者だ。そのため、余人が踏み込めないありえない設定も竜星なら成立させるという期待がある。主演作の『都立水商!〜令和〜』(MBS/TBS系)は水商売を教える高校の新米教師という役どころだったが、恒松祐里や神尾楓珠らの生徒役を相手に風俗業と教師ならではの葛藤をすくい取っていた。犬飼貴丈とのW主演作となった映画『ぐらんぶる』では、目にまぶしい限界露出で実写化の壁を大胆に突破した。

 もともとサービス精神旺盛で求められれば応えるところがあるにしても、きわどい設定をものにできるのは本人の力量と言っていいだろう。パリコレに出られるほどの端整な容姿を備えながら大泉洋にも通じるおかしみを醸し出す竜星は、視聴者の様々な感情を背負えるだけの器の大きさがある。愛と憎悪は紙一重であり、憎しみという名の負の感情はふとしたきっかけで愛情に転化する。間違った方向に猛進してばかりの賢秀も、いつか苦労が身に沁みて改心するに違いない。竜星演じる賢秀が「俺たちのニーニー」になる日も遠くないと信じるのである。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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