『ちむどんどん』我らが賢秀の“オリジン”が明らかに 彼は“入り口”に戻ることができるのか

『ちむどんどん』賢秀のオリジンが明らかに

 アメコミ系の作品では「オリジン」という言葉がよく出てくる。単語そのもの意味は「起源」であり、ヒーローがいかにしてヒーローになったのか、またはヴィランがなぜヴィランになってしまったのか。そういったキャラクターの生い立ち、そして成り立ちを描くエピソードを「オリジンストーリー」と言う。

 そして、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第44話で描かれたのは、なんと我らが賢秀(竜星涼)のオリジンだった。今週のタイトル「てびち!てびち!てびち!!」の意味するものが、まさか今日における賢秀を“賢秀”とさせたものだったとは……。

 前回、CMを打つために資金が必要だと話していた我那覇(田久保宗稔)。時間の問題ではあったが、視聴者としては「ついにきたな」と言ったところで、能天気に副社長に任命されて喜んでいた賢秀は、やはり今回も騙されて金を持ち逃げされてしまった。しかし、興味深かったのは彼の「またか、今度こそはと思っていたのに……」という言葉である。

 つまり、彼も彼でちゃんと前回詐欺に遭っていた自覚がありつつも、その詐欺師を許し、改心したと信じて手を組んでいたということだ。どれだけ酷い目に遭っても、また信じてあげる。彼自身が三姉妹や両親からそうしてもらってきたからこそ、彼も他人にそうしてあげる力があるのだ。

「俺はいつになったら、母ちゃんに恩返しできる? もう家族やめてもらう、縁を切ってもらう。俺は疫病神」

 少なくとも、さまざまなことに対して自覚のある賢秀だが、どうやら過去にも同じ発言をしていたということで、回想によりその時の出来事が「てびち」という沖縄の豚足の料理を軸に解き明かされていく。この回想シーンを「家族愛」的なものとして描いたという意図は理解できるが、なぜ賢秀がろくでなしになってしまったのか、という点も意図的に描いているのだとしたら末恐ろしい演出である。

 わかったのは、賢秀のろくでなしっぷりは“大人になってから”ではなく、子供の時からだったことだ。1人、2個ずつというルールのてびちを「俺はまだ1個しか食べてない」と嘘をついて食べようとする賢秀。良子がすかさず見抜き、彼を「インチキ」と言って食べさせないようにする。元々貧しかった比嘉家にとって、お肉料理はご馳走だ。「賢秀が3つ食べることで誰かが1つ食べられないことが可哀想」という発想も、この時の賢秀には芽生えていない。それどころか、正論で諭した良子に「は!? 女のくせに!!」と逆ギレし、手まで出していた。自分の食に対するワガママひとつで、これほどまでに妹に暴力的になる時点で彼は“間違っている”。しかし、大人の賢秀がずっと間違い続けてきた原因は、この時(幼少期から)の間違いを正してもらえてなかったことにあった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる