山下智久の永瀬は観ていて気持ちがいい! 『正直不動産』が視聴者の心を掴んだ理由

『正直不動産』が視聴者の心を掴んだ理由

 本作は私たちに問いかける。「何のために仕事をしているのか」と。そして、本作は主人公とヒロイン・同僚のみならず、各話で彼らが出会うインスペクターや建築現場の現場責任者、銀行員、敵対する不動産会社で働く人ら、全ての人々の、仕事に対する真摯な思いを描いた物語でもある。第6話において、桐山(市原隼人)から「今は、何のために仕事をしてるんですか?」と問われ、永瀬は答えを返せなかった。永瀬もまた、初回において和菓子職人・石田(山崎努)に「50年も和菓子を作り続けてきた理由」を聞いていた。それに対し「俺の菓子食うと、皆幸せそうな顔をするから」と返した、永瀬曰く「1円にもならない」石田の答えと、仕事の充足感と心境の変化で「風呂なしアパートもそんなに悪くない」と思い始めている永瀬の現在の心境は、ちょっと似ていたりする。

 当然のことながら、彼らの仕事の先、働く理由の先には「人」がいる。彼らの仕事は「相手を信じる・信用される」ことで成り立つ仕事だ。登坂の「人を信じるということは、相手に全てを賭けるということ」という言葉に、全てのことが詰まっているように思う。「家を売る・買う」人々の信頼関係も、登坂と永瀬・大河(長谷川忍/シソンヌ)、鵤(高橋克典)と花澤の関係によって示される社長と部下の信頼関係も、全ては「人を信じて、相手に賭ける」というリスクを伴うものでもあることを示している。その強固な信頼関係の揺れる様、あるいは築かれていくさま、その上で為される物事が、本作のドラマの全てである。長い間ライバル関係だった永瀬と桐山が互いの能力を認め合い、時に協力しあう関係へと発展していることや、月下が花澤と対立した後、芋焼酎ですっかり意気投合することが、どうしようもなく愛おしく見えるように、「相手を信じ、互いに認め合うこと」、その上で成り立つ関係性がどんなに素敵なことなのか、本作は教えてくれる。

 では、こじれにこじれた敵対する不動産会社のボス2人はどうなるのか。「歪んだ」動機で、登坂不動産を本気で潰しにかかるミネルヴァ不動産の社長・鵤に対して、永瀬たちは「正直」戦法のまま、戦って勝つことができるのだろうか。

■放送情報
連続ドラマ『正直不動産』(全10話)
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送
出演:山下智久、福原遥、市原隼人、草刈正雄、大地真央、高橋克典、倉科カナ、長谷川忍(シソンヌ)、泉里香
原作:大谷アキラ(漫画)、夏原武(原案)、水野光博(脚本) 
脚本:根本ノンジ
音楽:佐橋俊彦
制作統括:黒沢淳(テレパック)、山本敏彦(NHKエンタープライズ)、岡本幸江(NHK)
プロデューサー:清水すみれ(テレパック)、宇佐川隆史(NHKエンタープライズ)
演出:川村泰祐(アンドリーム)、金澤友也(テレパック)、野田健太(テレパック)
写真提供=NHK

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