Netflixオリジナル作品の記録を続々と更新 『ブリジャートン家』の成功を紐解く
現代との融合で多くのひとを引き込むことに成功
この作品のファッションの色使いは非常にわかりやすい。ブリジャートン家は、淡い水色を基調としたドレスや内装が施されている。一方で、三人の娘を意地でも良い家に嫁がせようとしているフェザリントン家は濃い緑や黄色のドレスを着ることで存在感を示している。そのため、登場人物は多いものの服を見れば一目瞭然。分かりやすく、話も入ってきやすい。そして何よりデザインとアクセサリーを施した装いが、現代離れしておりより美しく思わせる。
また、ファッションだけでなく音楽についても、気になった人は多いのではないだろうか。本作で出てくるような華やかで賑わいを見せる当時の社交界では、バイオリンなどでクラシックが流れているイメージがある。しかし、シーズン1冒頭、聞き慣れた音楽が流れてきて驚いた。クラシックバージョンのアリアナ・グランデの「thank u, next」だったのだ。その後も、テイラー・スウィフトやエド・シーランの楽曲が流れる中で、男女が踊りを繰り広げていく。
本作は観ている私たちを衣装や完璧な世界観で圧倒し、現実を忘れさせ、物語に入り込ませてくれる。しかし、当時の時代要素のみで視聴者を置き去りにすることなく、密かに19世紀と現代の融合を示すことでさらに楽しませてくれる。また貴族の恋愛や性に関することは現代のドラマで描かれていることと何ら変わりなく、むしろ相乗効果もありどのシーンを観ても素敵だと感じることができる。これこそ本作の魅力の一つであると言えよう。
シーズンごとに主人公が変わるのも『ブリジャートン家』の魅力?
先述の通り、シーズン1のメインキャラクターはブリジャートン家のダフネと、公爵のサイモンである。しかし、シーズン2からダフネは登場するものの、メインキャラクターではなく、ダフネの相手探しに奮闘していた長男のアンソニーが主人公となる。ブリジャートン家は大家族であり、今後シーズン3・4の制作も確定していることから、一人一人に焦点を当てていくのではないだろうか。それに伴って、ダフネやアンソニーたちのその後も垣間見ることができて、彼らの本当の人生の歩みを見守ることもできるのだ。残念ながら、シーズン1でサイモン役を演じたレゲ=ジャン・ペイジは、シーズン2には出演していない。彼の容姿や仕草に恋をした視聴者も多く、今後のダフネとの関係も気になるところなので、シーズン3以降での復帰を誰もが待ち望んでいることだろう。
シーズン2でアンソニーの相手役となるのは、これまたNetflixで人気を博しているドラマ『セックス・エデュケーション』に出演しているシモーヌ・アシュリー。こういった話題の俳優や多種多様な俳優たちを起用することで本作は注目もされてきた。未来のブリジャートン家の相手役にも期待が高まる。
さらに、あまりイギリス文化に関わりのない我々日本人にとっては、爵位や紅茶、貴族のスポーツまでも目新しく感じられるだろう。今でこそ、男女平等と言われる社会になりつつあるが、当時の女性は社交界で未来の夫を見つけ、持参金を持って嫁ぐ。それが当たり前であり、女性たちは良い男性に巡り会うために奮闘していたが、ブリジャートン家の次女・エロイーズ(クローディア・ジェシー)は珍しく社交界に嫌気が差している女性だ。読書が好きで、男性と同じように当たり前に大学で学びたいと考えている彼女の行動は、時にメインキャラクターよりも魅了してくる。そんな伝統的な考えに捉われない彼女の言動にも注目したいところだ。
キラキラと眩しいイギリス貴族の様子が描かれるだけでなく、現代の若者も悩むようなことも描かれ、現実らしい一面も見せる『ブリジャートン家』。そんな多面性も、本作が世界中のNetflix視聴者を魅了する理由の一部だろう。だからこそ誰もが、こんな貴族になってみたいと思い描くに違いない。
■配信情報
Netflixシリーズ『ブリジャートン家』シーズン1、2
Netflixにて独占配信中
(c)LIAM DANIEL/NETFLIX