『ベター・コール・ソウル』S6前半戦終了 『ブレイキング・バッド』最大の謎に向けて
※本稿には『ベター・コール・ソウル』シーズン6のネタバレを含みます。
深夜のアルバカーキ。ひと気のない通りのマンホールがそろりと開くと、中から男が現れた。ラロ・サラマンカ(トニー・ダルトン)だ。ドイツで掘削作業員からラボ建設工事の秘密を聞き出した彼は、下水道に潜み、ガス(ジャンカルロ・エスポジート)のクリーニング工場を4昼夜見張り続けていた。シーズン6前半の最終回となる本エピソードのタイトルは『計画と実行』(Plan and Execution)。策略が張り巡らされ、死の風が吹く“アルバカーキ・サーガ”屈指の傑作回だ。
ジミー(ボブ・オデンカーク)は予想外の事態に見舞われながらも、ついにハワード破滅計画を実行に移す。ここで再び“ソウル・グッドマン・プロダクションズ”の面々が大活躍。シーズンを追うごとにハードさを増す『ベター・コール・ソウル』だが、彼らが出てくるとなんだかホッとしてしまう。ジミーとキム(レイ・シーホーン)は計画の万全を期すため、全ての工程をポストイットに書き記し、それをボードに張り出している。これは映画や小説等の作劇における“プロットボード”という手法で、その最終段階が役者とクルーが揃った撮影なのだ。ここには『ベター・コール・ソウル』製作陣のフィルムメイキングに対する愛があり、なんとも微笑ましい。
カメラを向ければ幽霊も饒舌になるのか、ドン・エラディオ(スティーヴン・バウアー)に向けてビデオレターを撮影するラロも嬉々としている。ラボ潜入を予告し、愛する叔父ヘクター(マーク・マーゴリス)に電話をかけると……ノイズが聞こえる。盗聴だ。ガスはラロがヘクターに接触することを先読みし、あらかじめ罠を張っていたのだ。これにはさすがのラロも怒りを隠せない。後に『ブレイキング・バッド』でガスの命取りとなるヘクターの存在が、ここでは生命線となるのが面白い。反復と踏韻の語り口もまた『ベター・コール・ソウル』の妙味である。だがラロは即座に別の計画を閃いたようだ。再びヘクターに電話をかけると「今夜ヤツを驚かせる」と告げ、これを盗聴していたマイク(ジョナサン・バンクス)らが即座に動き出すのを見届けた。
これまで6エピソードを費やして描かれてきたハワード破滅計画には、「果たしてこんなことで彼を失墜させられるのか?」と半信半疑だったが、いざキマってみると強烈だ。HMMにとっておそらく創業以来最大級規模の集団訴訟であろうサンドパイパー事件の調停で、ジミーの策略に踊らされたハワードは醜態を晒す。これを目撃するのがアルバカーキ法曹界の人格者として印象深いメイン(エド・ペグリー・ジュニア)、シュワイカート(デニス・ボウトシカリス)というのも、シリーズを観続けてきた者にはハワードの負った社会的ダメージがいかほどか想像できる。