「ウォルトとジェシーが帰ってくる」 『ベター・コール・ソウル』イベントにキャスト集結

出演者が語る『ベター・コール・ソウル』S6

 4月18日(日本では4月19日)から世界同時配信となる『ベター・コール・ソウル』シーズン6を目前に、キャストと製作者がロサンゼルスで開催されているテレビシリーズのフェスティバル「PaleyFest」のパネルに登壇した。アカデミー賞授賞式の会場でもあるドルビーシアターを、アメリカ領サモア大学ロースクールやLos Pollos HermanosのTシャツを着込んだファンが埋め、ラストシーズンの放送開始を祝福するイベントが行われた。

(c)Earl Gibson III/HFPA

 シーズン6第1話の試写後に始まったトークパネルには、ショーランナーのピーター・グールドとジミー・マッギルことソウル・グッドマン役のボブ・オデンカーク、マイク・エルマントラウト役のジョナサン・バンクス、キム・ウェクスラー役のレイ・シーホーン、ガス・フリング役のジャンカルロ・エスポジート、ハワード・ハムリン役のパトリック・ファビアン、ナチョ・ヴァルガ役のマイケル・マンド、ラロ・サラマンカ役のトニー・ダルトンが登場。まずは、第1話のコールドオープン(アバンタイトル=本編前のプロローグ)の意味を解き明かす。「これは、ソウルが革命を起こした後のタイムラインで、そのとき彼は口ひげをたくわえて、ネブラスカ州オマハのどこかにいるのでしょう」とグールドが言うと、オデンカークは「『ブレイキング・バッド』では、ソウルのオフィス以外のシーンはなかったから、彼がどんな生活をしているのか全く知らなかった。観客のみなさんはすでにおわかりかと思うけど、この映像で家の中を移動しながら映されるものには、前のシーズンを思い起こさせるものもあれば、シーズン6を観終わるまでは意味がわからないものもある」と付け加える。グールドは、「私は、落ち込んだときにこの映像を観るようにしています。それが答えになると思う」と、およそ7年間に及ぶ『ベター・コール・ソウル』を締めくくる映像になっていて、シーズン6を観終わったときに再びコマ送りで観ると、いろいろな発見があるだろうと語っていた。

ボブ・オデンカーク (c)Earl Gibson III/HFPA

 ボブ・オデンカークについては、昨年7月27日にニューメキシコ州アルバカーキの撮影現場で心臓発作を起こし緊急搬送されたことが大きなニュースになった。その後、9月に撮影が再開されている。そのときのことを、このドラマを愛し応援してきたファンにどうしても伝えたかったのだと言葉を選びながら話し始めた。オデンカークは、「おかしなことだけど、まる1週間の記憶がないんです。一体何が起きたのか把握するまで時間がかかって、退院して家に戻った8日後から少しずつ記憶が戻ってきました。みなさんも、SNSとは邪悪な場所だと思っている節があると思うけど、私の人生のあの瞬間においては、信じられないほどの温かな愛とサポートに満ちた場所になっていました。本当に信じられないような状況で、今でも驚いています。このことは、今後の私の人生にも残り続けるでしょう。みなさんが送ってくれた想いの全てに感謝します」と、声をつまらせながら語った。

(左から)レイ・シーホーン、パトリック・ファビアン (c)Earl Gibson III/HFPA

 会場のしんみりとした雰囲気を変えたのは、ソウルの“妻”で相棒のキム役を演じたレイ・シーホーン。オデンカークが倒れた瞬間は、シーホーンとハワード役のパトリック・ファビアンと3人でシカゴ・カブスの試合をテレビで観ていた。「COVID-19のプロトコルで、飛行機の格納庫のような大きなスタジオで撮影していたんですが、ボブとパトリックと私は全シーズンを通じて仲良くしていて、待ち時間も控室に戻らずにテレビを観ていました。そのとき、ボブが気を失っているように見えました。すぐにそれ以上の異変に気づき、大声で救急隊員を呼びました。アシスタント・ディレクターが以前救急隊員を派遣する仕事を何年もやっていて、救急救命士の訓練を受けていたこと、新型コロナウイルス対策官が撮影現場にいたことが救いになりました。すぐに彼の脳に酸素を供給し、家族を呼び、緊急手当てをすることができました。何も覚えていないボブのために、彼の妻のナンシーが一部始終をビデオに撮っていたので、自分の緊急搬送を報じる新聞記事を読んで驚くボブの姿を見て、私たちは安堵とおかしさで死ぬほど笑いました(笑)」とシーホーンは思い返した。

(c)Joe Pugliese/AMC/Sony Pictures Television
(c)Greg Lewis/AMC/Sony Pictures Television
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 『ベター・コール・ソウル』は、2008年から2013年まで放送された『ブレイキング・バッド』の前日譚。『ブレイキング・バッド』の主人公ウォルター・ホワイト(ブライアン・クランストン)とジェシー・ピンクマン(アーロン・ポール)と行動を共にするノリの軽い弁護士ソウル・グッドマンが誕生するまでの物語だ。シーズン5で満を持して弁護士ソウルが登場したが、「まだ、なりかけの状態」だとボブ・オデンカークは説明する。「第1話のソウルは、どっぷりはまることを避けています。それは、シーズン5でマイクと共に砂漠で経験したことが、彼の自意識過剰を増長させ、ソウルになるために必要なものーー自信と威厳を失ったからです。シーズン6の13話をかけて、ジミーは完全にソウルになります」と、ブレイキング・バッド(悪に転化)するさまを匂わせる。

 ソウルの過去同様、『ブレイキング・バッド』で、ガス・フリング(ジャンカルロ・エスポジート)の片腕として様々な裏稼業に就いていたマイク・エルマントラウトの過去も描いている。マイクを演じたジョナサン・バンクスは、「自分が演じたキャラクターについてしか言うことはできないけれど」と前置きした上で、こう述べる。「嘘つきは嘘つき。他人を騙せば、自分を騙していることになる。マイクは自分が嘘つきで、殺人鬼で、多くの悪事に責任があることを知っています。そして彼は、自分を正当化しようとしません。ありのままです。(シーズンを通じて)私自身も進化していないし、キャラクターも進化していません。そして、そのまま終わるのです」。

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