又吉ワールドの複雑さをどう受け止める? 吉岡里帆ら主演ドラマ『椅子』の楽しみ方
吉岡里帆は、第1話でこれまでのイメージに近い、一見朗らかだがどこか陰のある役柄を演じているが、ラストではこれまで見せなかった反転ぶりを見せてくれる。第2話では、まったく性格の異なる二役を繊細に演じ分けてみせた。『又吉直樹マガジン 椅子』にも椅子とのグラビアという形で登場している吉岡は、椅子を偏愛する又吉の良き理解者のように思える。ストーリーを進めつつ、吉岡の演技を受けきった岩崎は、今後ドラマ出演が増えていきそうな予感がする。
8つのドラマは関連性がなく、ジャンルもテイストもバラバラ。決してわかりやすいストーリーや表現ばかりでもない。「複雑な世界、ありきたりじゃない普通じゃない世界」を作ろうとした又吉をはじめとする作り手たちの狙いどおりだと言えるだろう。「複雑な世界」とは、世界の見え方も価値観も違う人々が織りなす世界ということ。そして、そんな人々の営みをじっと静かに見つめていたり、手助けしているのが椅子だ。
椅子にはさまざまな形がある。高い椅子もあれば、低い椅子もある。大きな椅子もあれば、小さな椅子もある。座るための椅子もあれば、座らずに踏み台にされる椅子もある。座りやすい椅子もあれば、そもそも座れない椅子もある。又吉の言うように、座る椅子が変われば、世界の見え方や考え方が変わってくるのかもしれない。椅子は世界の見え方を変えてくれる触媒なのだろう。
『WOWOWオリジナルドラマ 椅子』について考えていると、今自分が座っている椅子も特別なもののように感じてくる。それが又吉直樹の狙いなのかもしれない。
椅子と女性の人生を重ねて描く異色のオムニバスドラマ
『椅子』の見どころを徹底解説!
芸人、そして作家として活躍する又吉直樹の無類の“椅子”好きが転じて、書き下ろしストーリーにてドラマ化が実現。オムニバスドラマ『W…
■作品情報
『WOWOWオリジナルドラマ 椅子』(全8話)
5月27日(金)スタート 毎週金曜23:30〜放送・配信
WOWOWプライム:第1話無料放送
WOWOWオンデマンド:無料トライアル実施中
出演:吉岡里帆、モトーラ世理奈、石橋菜津美、黒木華ほか
作:又吉直樹
企画・プロデュース:射場好昭
椅子監修:萩原健太郎
監督:松原弘志、長澤佳也
プロデューサー:小川直彦、長澤佳也、松原弘志
制作協力:TBSスパークル
製作著作:WOWOW
<各話タイトル>
※()内は登場する椅子
第1話「電球を替えたい」(No.14)
第2話「最高の日々」(スツール60)
主演:吉岡里帆
第3話「海へ」(ラ・シェーズ)
第4話「オモイデ」(Yチェア)
主演:モトーラ世理奈
第5話「まぼろしの」(ルイ・ゴースト)
第6話「雨が降っている」(ネイビーチェア)
主演:石橋菜津美
第7話「人間達の声がする」(Aチェア)
第8話「椅子を取りに行く」(アリンコチェア)
主演:黒木華