宮崎駿、細田守などの日本アニメを参考に? 『ミューン 月の守護者の伝説』監督に聞く

『ミューン』監督が語る日本アニメへの愛

米国と日本のアニメにフランスらしさをブレンド

――本作は3DCGを主体に製作されていますが、ディズニーやピクサーとは異なる印象の作品に仕上がっています。ビジュアルを作る上で何を大切にしましたか?

エボヤン:ディズニーやピクサーと異なるものを目指す意識を特別に持っていたわけではありませんが、私たちのルーツとなった文化が異なる分、違ったものになったのだと思います。アメリカのアニメーションは壮大なエンターテインメントでスペクタクルな要素満載ですが、私たちはそれに加えて、“宮崎アニメ”のような神話的な要素、さらにフランスらしさ、その3つの要素が混ざり合っているんです。

――作品の一部に美しい手描き2Dパートもありますが、これはなぜ入れようと思ったのですか?

エボヤン:作品に変化をもたらすアクセントとしての意味と、デッサンに長けたアニメーターがいるので、そのセンスを活かしたかったという2つの理由からです。夢のシーンで手描きを採用しましたが、映画を観る子どもたちに、この場面は違う世界に入ったんだと自然に伝わるように、描写に変化をつけたかったんです。作品全体がファンタジーなので、ある意味全て夢のような世界ですが、さらにその中でも特殊な世界に入り込んだ時に2Dの手描きシーンを用いています。

――日本では手描きの2Dアニメが人気ですが、2人は3Dと2Dのスタイルをどのように考えていますか?

エボヤン:個人的には3Dを開拓していくことに興味を持っています。日本のアニメには素晴らしい表現がたくさんあり、そのインスピレーションを3Dで表現していきたいのです。3Dの方が開拓できる余地が大きいと思っていて、その分、その世界を作っていく楽しみは大きいのです。それと、フランスのアニメーション市場を考えると、3Dの方がより幅広い客層に届けることができるというのもあります。

――エボヤン監督は、フランスとアメリカでアニメーションの仕事をされていますが、両国のアニメーション業界の違いはどのように感じていますか?

エボヤン:私はアメリカのドリームワークスで『カンフー・パンダ』などに参加しました。アメリカのスタジオは1000人くらいスタッフがいて、一つの作品に300人くらいが一つのチームとなって作品を作ります。フランスでは、どちらかと言うとアニメーションを作るのは職人肌の人たちで、個人の表現として作品を作ることが多いですね。

――エボヤン監督は、フランスの巨匠ミシェル・オスロ監督ともお仕事されていますね。

エボヤン:オスロ監督はまさに職人気質の代表的な作家で、日本の宮崎駿監督と似たようなタイプだと思います。ストーリーボードを自分で作り、最後の工程まで自分で管理しますし、ストーリーも彼の頭の中にあるんです。ドリームワークスの製作スタイルとは正反対と言えます。ドリームワークスは、全員で作りながら全員で試行錯誤を繰り返していくんです。この作品では100人くらいのスタッフで作っていますから、オスロ監督作品とドリームワークスの中間くらいの規模のチームです。アメリカの作品ほどのバジェットは我々にはありませんでしたから、その中でこれだけ創造性の高いものを作れたことを誇りに思っています。

――最後に、これから本作を観る観客に向けてメッセージをお願いします。

エボヤン:まず、日本の皆さんにお伝えしたいのは、私たちがいかに日本アニメを愛していて、大きな影響を受けているのかということです。その想いを糧にここまでやってきたのです。ずっと今までも日本のアニメを愛してきましたし、今でもその気持ちに変わりありません。この作品から、私たちの日本アニメへの愛を受け取ってほしいです。

フィリポン:フランスと日本は、異なる文化を持つ国ですが、このアニメーションには、それを乗り越える不変の共通性があると思っています。この作品が描く夢の世界を通して、人間が夢見ること、創造することの素晴らしさが伝わることを願っています。アニメーションにはそういう力があると思いますし、実写とは異なる形でそれを届けることができるはずです。

※宮崎駿の「崎」はたつさきが正式表記。

■公開情報
『ミューン 月の守護者の伝説』
シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
監督:アレクサンドル・エボヤン、ブノワ・フィリポン
音楽:ブリュノ・クレ
提供:リスキット、ホリプロインターナショナル、キャトルステラ
配給:リスキット
2014年/フランス/フランス語・英語・日本語/シネマスコープ/85分
(c)ONYX FILMS-ORANGE STUDIO-KINOLOGY
公式サイト:mune-movie.com

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