宮崎駿、細田守などの日本アニメを参考に? 『ミューン 月の守護者の伝説』監督に聞く

『ミューン』監督が語る日本アニメへの愛

 フランスのアニメーション映画『月の守護者の伝説』が4月19日より先行公開、5月20日より全国公開される。

 本作は、東京アニメアワードフェスティバル2015のコンペティション部門・長編アニメーションで優秀賞を獲得した3DCG。月と太陽が同時に存在する世界で、月の守護者に選ばれた不思議な生物ミューンが、冥界の王に盗まれた太陽を取り戻すため、蝋でできた少女グリムや太陽の守護者ソホーンらとともに、冒険の旅に出る。個性的なキャラクターたちと独自の世界観に魅了される、血沸き肉躍るアドベンチャー作品だ。

 リアルサウンド映画部では今回、監督のアレクサンドル・エボヤン氏とブノア・フィリポン氏にインタビューを実施。本作の魅力や影響を受けた作家、実写とアニメーションの違いやフランスとアメリカのアニメーションの違いなど、多岐にわたる話を聞いた。(杉本穂高)

子どもの純粋な想像力から生まれたアイディア

――太陽や月をロープで結んで管理・守護しているという世界観が個性的です。このアイディアはどのように思いついたのですか?

ブノア・フィリポン(以下、フィリポン):子どもの想像力はシンプルかつ純粋で、太陽や月を見ると、手に取ろうとしたり、引っぱろうとすることがありますよね。このアイディアは、そのようなシンプルなところから生まれました。そして、太陽とは実は儚い存在ではないか、だとしたら、守る存在が必要だと考えて、太陽を守護するガーディアンがいるという設定を作りました。さらに、昼の太陽が守られているなら、夜の月にも当然いるはずと発想し、月の守護者が生まれました。

――世界観のユニークさもさることながら、キャラクターたちの造形も非常に面白いですね。モデルにした生物などはいるのでしょうか?

フィリポン:私はアニメーターではありませんから、言葉でキャラクターのイメージを伝えました。主人公のミューンは子ヤギをベースにデザインしています。ポーンというものをご存じでしょうか。神話の生き物で、半分ヤギで半分人間の半身獣なのですが、それもイメージに含まれています。ソホーンは猛獣のイメージ、グリムは蝋の身体を持つ女の子で、動物ではありませんが、物語に合ったキャラクターを考えて配置しました。こういう人間ではないキャラクターについては、日本のアニメーション、宮崎駿監督や細田守監督の作品にも影響を受けています。

――本作の制作にあたり、元ディズニーの伝説のアニメーター、グレン・キーンさんの協力があったと聞きました。具体的にキーンさんはどんな関わり方をされたのですか?

アレクサンドル・エボヤン(以下、エボヤン):実は私の友達なんです。私がドリームワークスに所属していた時に知り合いました。今回は、彼にストーリーボードを見てもらい、助言をもらって一緒にアイディアを練りました。

実写とアニメーション出身の監督による共同作業

――2人で監督していますが、役割分担はあったのでしょうか?

フィリポン:私は元々脚本家なので、シナリオの作成と全体の流れを担当しています。アレクサンドルの方はテクニカル部分、アニメーション作業の全体を担当しています。

――フィリポン監督は、元々実写映画の仕事をされていたそうですが、アニメーション制作に乗り出すきっかけはあったのですか?

フィリポン:シナリオライターとして、色々な分野で仕事したいと思っていました。アニメーションは実写よりも、詩的なもの、抒情的なものを描くことに向いているので、実写では挑戦しにくかった物語を是非やりたかったんです。

――実写とアニメーション、表現の違いとしてどんなことを感じましたか?

フィリポン:やはり、アニメーションの方が制約が少ないので、ゼロから世界を創造しやすいですね。実写では、監督や俳優がいて、それらをディレクションしていきますが、アニメーションは存在しないものをゼロから作り上げて動かすので、創造の幅が広く大変に刺激的でした。

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